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金商法の監査報告書にKAM(Key Audit Matters)記載義務化

有価証券報告書に「監査上の主要な検討事項」 いわゆる「KAM(Key Audit Matters)」の記載が義務化されます。

 

金商法の監査報告書にKAM(Key Audit Matters)記載義務化

 

 
今年に入ってから、監査法人と、今度から始まるKAM記載義務化について、いろいろと情報交換の話をしています。聞いていると、難儀な対応だなと感じます。

 

監査報告書とは

監査報告書といえば、監査法人が決算数値等をチェックして、計算書類に記載の内容に問題ないことを表明する報告書です。

当該企業に「継続企業の前提に疑義」でもない限り、日本の上場企業の場合は、無限定の適正意見の報告書をいただけることが多いです。(これはこれで、ボイラープレート化とも言われて、お決まり文句が報告書に並ぶだけですので、議論の余地があると言われています。)

 

 

監査報告書にKAM記載義務化とは

この監査報告書に、「監査上の主要な検討事項」 いわゆる「KAM(Key Audit Matters)」の記載が義務化されます。

KAMは、欧州ではすでに導入されており、米国でも2019年6月期以降から始まるとされています。日本でのKAMの運用開始は、3月決算の場合は、2021年3月期決算からとされています。

なお、会社法上の監査報告書(株主総会の招集通知に付ける方の監査報告書)は、従来通りとされています。 

 

 

KAM記載義務化で監査報告書はこう変わる

監査報告書の構成は、以下のように項目記載の順番と内容が変わるようです。

経営者の責任だけでなく、監査役や監査役会(会社によっては監査等委員会)にも責任がある旨が記載されます。

 

従来 変更後
  1. 財務諸表に対する経営者の責任
  2. 監査人の責任
  3. 監査意見
  4. 利害関係
  1. 監査意見
  2. 監査意見の根拠
  3. 監査上の主要な検討事項(KAM)
  4. 財務諸表に対する経営者並びに監査役及び監査役会の責任
  5. 監査人の責任
  6. 利害関係

 

 

「監査上の主要な検討事項」 いわゆる「KAM (Key Audit Matters)」とは

このKAMとは、簡単に言うと、監査報告書を作成するにあたり、監査人が、当該企業において特に重点的に検討した点と内容をまとめたものになります。

一般的に、当該企業の事業リスクについて触れるらしいと言われています。また、決算の数値を変動する要素が、企業によっては対外的に公表してない場合、どうするのかということも議論されています。

個人的な感想としては、無限定の監査報告書をつけても、会計不正等を起こした企業がいろいろと出てきてしまいましたので、「監査人は何をチェックしていたのか」という風潮に対して、免責する一つの手段として使われるのではないかと感じています。

 

 

株式会社三菱ケミカルホールディングスのKAM先行事例

 「株式会社三菱ケミカルホールディングス」が、このKAMを先行事例として作成されています。どのようなことをKAMとして取り上げているのか見てみると、

 

  1. 産業ガス事業の企業結合
    企業結合における顧客に係る無形資産の測定

  2. のれんの評価
    総資産の 11.6%をのれん代に計上。将来キャッシュ・フローの見積り及び成長率並びに割引率については不確実性

  3. 耐用年数を確定できない無形資産の評価
    連結子会社である田辺三菱製薬株式会社が買収した会社の仕掛研究開発費

 

https://www.mitsubishichem-hd.co.jp/ir/pdf/00828/00921.pdf

上事例を見ると、M&Aしたときの、買収金額と企業価値の差異、いわゆる「のれん代」や、将来予測に基づいた現在価値など、前提条件次第で変わる項目ならば、たしかにKAMとして取り上げられるべきものでしょう。

しかし、こういう要素を全く持っていない企業の場合、何がKAMとして取り上げられるのか。

今後、企業と担当される監査人の間で議論して、絞り込んでいくことになるのでしょう。

 

 



うちの公認会計士は「こんな映画当たらん」とか平然と言いますが、つくってる側からすればバクチと一緒で、やってみなくちゃわからない。
by 大崎 洋



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