有価証券報告書などの記述内容の好事例について。

株式を上場している企業の場合、経営状況などを決算短信、有価証券報告書などに記載する機会が多々あります。
基本的に、こういう内容を書きなさいという雛形があるので、それに沿って記述すれば、提出書類の要件は満たすことになります。そして、だいたい毎年・毎回同じことを書くことになります。
しかし、それら提出書類を通じて、投資家等に自社の状況や将来価値を知ってもらうために、雛形では不十分なことがあります。
金融庁がまとめた企業情報の開示の好事例
金融庁で、そのような書類の記述内容の好事例をまとめ、公表されています。
具体的には、
- 「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の開示例
- 「事業等のリスク」の開示例
- 「MD&Aに共通する事項」の開示例
- 「キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容等」の開示例
- 「重要な会計上の見積り」の開示例
- 「監査の状況」の開示例
- 「役員の報酬等」の開示例
の内容を、金融庁のサイトで紹介されています。
個人的に興味を持った好事例内容
特に興味を持ったのが、以下の内容です。
「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の開示例:味の素株式会社
「おいしくスマートな調理を実現します」などの非財務KPIを掲載
今後、ESGに絡めて、非財務に関する目標と定量的な情報を掲出していくのと、こんな感じになるのでしょうか。
「事業等のリスク」の開示例:味の素株式会社
テーマごとに関連する機会とリスクと取組状況を記載
財務リスク・マテリアリティ項目ごとに関連する機会とリスクを列挙して、それらに対する主要な取り組みを記載されています。
「MD&Aに共通する事項」の開示例:株式会社丸井グループ
ROICやWACCを記載
機関投資家がよく使われるROICやWACCを記載し、同じ視点での会話ができるようにしています。
「役員の報酬等」の開示例:大和ハウス工業株式会社
<役員の自社株保有ガイドライン>
当社取締役 :原則、就任から3年以内に当社株式を6,000株以上保有する
当社執行役員 :原則、就任から3年以内に当社株式を3,000株以上保有する
グループ会社取締役:原則、就任から3年以内に当社株式を2,000株以上保有する
株主と同じ視点持つため、役員就任したら、自社株の保有を義務付けるのは、ストックオプションと違った効果があると思います。
上記以外にも、「好事例」と評するだけあって、雛形を超えている記述サンプルが多くあります。
こういうのを見ると、有価証券報告書等の記述も、ルールさえ守れば、自由度が高いということを実感します。(会社として、それを公開するかどうかという問題の方が大変様な気もします。)
企業のIR担当者は、一読の価値がある好事例集かと思います。