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コーポレート・ガバナンス報告書での「相談役・顧問等」の業務内容



社長の任期が4年だが、辞めた後が長い。相談役などの名誉職で残るから。
by 小林 喜光

 

コーポレート・ガバナンス報告書での「相談役・顧問等」の業務内容

 

 

2018年1月1日から「相談役・顧問等」の開示が法制化

以前、記事でご紹介したことがありますが、東京証券取引所に上場している会社では、2018年1月1日以後提出するコーポレート・ガバナンス報告書での「相談役・顧問等」の開示が始まりました。

 

www.keiei123.info

 

 

取締役としては退いたものの、「会長」や「相談役」などのような身分で、経営の中枢に残っているという、日本独特かどうかはわかりませんが、そういう企業が存在しています。

今回の開示は、「会長」や「相談役」が一体何を行っているのかという点を公表させるもので、数年前に始まった、役員の報酬開示に匹敵するぐらいの出来事だと思います。

 

 

【代表取締役社長等を退任した者の状況】

各社が東証に提出するコーポレート・ガバナンス報告書内の【代表取締役社長等を退任した者の状況】というセクションで、以下のような内容が記述されています。

  

氏名 役職・地位 業務内容 勤務形態・条件 (常勤・非常勤、報酬有無等) 社長等退任日 任期
XXX XXX 名誉顧問 取締役社長あるいは他の役員の諮問に応じ、意見を述べ、あるいは助言を行っております。 勤務形態:非常勤
報酬:あり
20XX年X月X日 1年(更新あり)

 

 

相談役・顧問等の業務内容

運用が始まり、「相談役・顧問等」の開示をされる企業がいろいろと現れてきました。

開示する企業側としては、この相談役・顧問等の業務内容というのが、なかなか曲者だと思います。

 

一番多く見かけるののが、

  • 当社経営陣からの相談事項に関する助言

という表記。当たり障りのない、無難な表記とも言えます。

 

また、

  • 対外活動業務
  • 公的団体活動等
  • 社会地域貢献活動
  • 経済団体活動
  • 財界活動

といった表記も見られます。

大会社の社長経験者ですと、経済団体での役職に就かれて活動をされている方もいらっしゃいます。

ちょっと変わったところでは、

  • 顧客との取引関係の維持等の対外的活動
  • 当社及びグループ各社へのフィロソフィの浸透活動

といった表記もあります。

 

なお、東証が出している記載のガイドラインでは、

具体的な業務内容や会社を代表しての活動が無く、単に役職名の肩書きの使用を許諾しているのみの者については、業務内容の記述は不要。

となっています。つまり、これといった活動内容がなければ、コーポレート・ガバナンス報告書に業務内容を記載しなくてもよいということになります。

 

 

「経営に否関与」という文言が重要

ここで重要なのは、「経営に否関与」ということを明示しておくことだと思います。

取締役会をはじめ一切の会議体に出席しておりません。また、経営上のいかなる意思決定および業務執行にも関与しておりません。

といった感じです。

上記のよう表記をいれないと、「経営に関与している」と外部の投資家等は判断してしまう可能性があります。

 

もともと、今回の「相談役・顧問等」の開示制度が始まった目的は、

社長・CEO 経験者が会社に相談役・顧問として残る場合、会社経営についての責任を有さない相談役・顧問による現役の経営陣への不当な影響力の行使が生じているのではないかという指摘や、誰が実質的に経営のトップを担っているかわからない事態が生じるという弊害の指摘もある。

というような、院政的な経営状態の会社があり、それを明らかにしようと狙いもあります。

すべての相談役・顧問に問題があるわけではありませんが、過去に起きた企業不祥事が、相談役・顧問に由来するものもありました。

通常、経営に責任をもつ取締役は、株主総会での信任を得るプロセスが存在し、外部の投資家等はそれで賛成・反対の意見表明できるわけですが、相談役・顧問の場合、そのプロセスがなく、実質の経営を行なうことができてしまいます。さらに何か問題が起きた際にも責任の所在が、会社法等で明確になっておらず、外部からはブラックボックスのような経営に見えてしまいます。

 

 

相談役・顧問制度の廃止

今回の開示が始まり、相談役・顧問制度を廃止する企業もでてきました。

なお、今回の開示は、

「相談役・顧問の役割は、各社によって様々であり、社長・CEO 経験者を相談役・顧問とすることが一律に良い・悪いというものではないこと」を前提

とされていて、相談役・顧問等が存在することが悪いというわけではありません。

しかし、過去にいろいろな企業でこの弊害が生じたことも事実で、そういう過去からの脱却という点で、あえて廃止という選択肢を選ばれているのだと思います。

 



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