企業の四半期開示制度がなくなるかも?

ここ数ヶ月、日本だけでなく世界の経済が、米国トランプ大統領のツイッター内容に振り回されています。
当事国に対してマイナスの内容が多く、株式市場の値動きに大きく影響を与えることが多いのですが、最近こんな内容を投稿されていました。
企業の四半期開示はやめた方がいいのではないか。
この内容で、株式市場への影響はあまりなかったように思いますが、上場企業側からすると、「ぜひ、そうしてほしい!」という意見が多いのではないでしょうか。
四半期開示制度とは?
四半期開示とは、株式上場企業が、財務・業績を四半期ごとに開示しなくてはいけないことです。
四半期開示は忙しい
株式上場企業で財務・経理やIRなどを担当されている方は、四半期開示は、とにかく忙しい。決算発表だけして1年がすぐに過ぎていきます。
簡単にまとめると、こんなルーティンで流れていきます。一つの四半期の決算発表が終わると、もう次の四半期の決算発表が始まる感じです。
企業は決算発表だけを行なっているわけではなく、株主総会やそれにまつわる配布物関係の準備といったこともあるし、もちろん本業の推進など、いろいろなことを行わないといけません。
① | X月 | 四半期末 棚卸作業など |
---|---|---|
② | X+1月 | 決算締め処理 短信などの書類作成 監査法人の監査 |
③ | X+1〜X+2月 | 45日以内に決算発表 アナリストや機関投資家対応 45日以内に四半期報告書を提出 |
④ | X+3月 | 四半期末 ①に戻る |
企業側だけでなく、企業の業績をウォッチするアナリスト側なども大変です。四半期開示ごとに、業績を分析して、何かしらのレポートにしなくてはいけません。
昔は年に2回の業績開示
四半期開示が始まる前は、中間期と通期の年2回の業績開示でした。
その頃は、 準備する余裕があるというか、決算発表や経営戦略などを新しい見せ方などを検討できる時間があり、ゆったりとした時代でした。
四半期開示になると、そういう余裕がなく、ひたすら進んでいく感じです。
日本の四半期開示は15年の歴史
日本で四半期開示が始まった歴史を調べると、こんな感じでした。
- 2003年4月:上場企業の四半期開示義務が開始
- 2008年4月:四半期報告書の提出義務が開始
かなり最近の出来事だとおもいます。
各国の四半期開示の歴史
世界各国の四半期開示が始まった年を調べてみると、アメリカは、日本よりもかなり昔から開始していたことを知りました。
- アメリカ:1934年から
- カナダ:1978年から
- イギリス:1999年から
- ドイツ:2003年から
- ユーロネクスト:2004年から
- 韓国:2000年から
- 中国:2001年から
- シンガポール:2003年から
参考資料)
金融庁の書類
四半期開示制度の弊害
四半期開示は、日本ではまだ20年も経っていない制度ですが、アメリカではかなり歴史のある制度と言えます。
そんな制度を「廃止しよう」というトランプ大統領の狙いは、何でしょうか。
実務的には、上述のようなタイトなスケジュールという点、またそれに関わる対応コストの発生があげられます。
もう少し大きな視点で見ると、「短期的な利益視点での事業経営」という問題点がある、と言われています。
ただ、トランプ大統領が「四半期開示制度をやめたい」と言っても、大統領にはそういう権限はなく、米国SEC(証券取引委員会)が決定権をもっているそうです。
もしアメリカで四半期開示制度が廃止されると、日本にもそういう流れが来そうです。果たしてどうなるのでしょうか。
経済団体で「四半期決算はやめましょう」と言い続けています。日本的経営のよさは中長期の視点を持つことです。
by 松下 正幸