新任取締役の経営手帳

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「今まで経験してきた史上例を見ない出来事」と称される【新型コロナ】

新型コロナの影響で恩恵を受けた企業ところ、そうでないところ、いろいろです。

「今まで経験してきたイベントリスクをはるかに超える史上例を見ない出来事」と称される【新型コロナ】

 

 

2020年5月から6月にかけて、3月決算の上場企業の決算発表が次々と行われました。

そこで発表された内容をみますと、新型コロナの影響が実体経済に大きく現れてきていることを感じられます。

 

 

ネガティブな影響の例:新型コロナで大きな損失が発生

 航空業界は、2020年1月以降、新型コロナウイルス感染拡大により大きな影響を受けております。感染が世界的な拡がりを見せ、全世界において渡航制限などの強力な措置がとられたことで、国境を跨いだ人の移動は消失し、日本国内においても、全国を対象に緊急事態宣言が発令され、国内の移動が自粛を求められるなど、航空需要の著しい減少に見舞われております。これは、過去に航空業界が経験してきたいかなるイベントリスクをもはるかに超える史上例を見ない規模のイベントリスクとして、当社グループの経営にも甚大な影響を及ぼしており、いまだ終息の兆しが見えておりません
(日本航空株式会社(9201)2020年3月期 決算短信)

 新型コロナウイルス感染症の流行により世界規模で急激な経済停滞に陥り、観光業界におきましても、日本政府観光局(JNTO)が公表する訪日外客数が前年同四半期比51.1%減、3月単月比では93%減と大幅に減少したことに加え、政府からのイベント等の開催や外出の自粛要請による影響もあり、国内外からの需要が減退しました。
 当社グループとしましては、お客さまと従業員の安心と安全を第一優先に、従業員のマスク着用、施設の消毒・換気といった対策実施や当社主催イベントを自粛するなど、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に努めながら、各施設を運営してまいりました。しかしながら、主要事業である宿泊部門では、インバウンドの宿泊人員が前年同四半期比48.9%減少の22.9万人となったことに加え、宴会・婚礼部門では延期やキャンセルが発生するなど、厳しい事業環境が継続しました。
(藤田観光株式会社(9722) 2020年12月期 第1四半期決算短信)

 

訪日観光客に依存していた観光・旅行業は甚大です。そして、日本国民自身の旅行自粛でさらに追い打ちがかかります。

日本航空で記されている「過去に航空業界が経験してきたいかなるイベントリスクをもはるかに超える史上例を見ない規模のイベントリスク」という言葉は、その被害の大きさが甚大ではなかったことを感じさせるものです。

また、藤田観光で記されている「3月単月比では93%減」は、痛々しいほどです。

こういう状況下、企業が生き延びるために、ある程度の資金が手持ちキャッシュとして確保していないと、存続が危ぶまれてきます。上場会社や大手企業になればなるほど、必要となる金額が膨大になります。

とはいえ、上場会社で新型コロナによる経営破綻となったものは、2020年6月上旬時点では「レナウン」ぐらいで、意外と少ない印象を受けます。

過去のリーマンショックでは、レバレッジを効かせていた不動産系などの会社がバタバタと破綻していった光景と較べると、今回は政府等による資金供給のおかげで、資金手当てが迅速に対応できていたのか。あるいは、これから経営破綻ラッシュがくるのか。どちらでしょう?

 

 

ポジティブな影響の例:新型コロナによる特需

 一部の製品では、新型コロナウイルス感染拡大により一時的に売上高が増加いたしました。
(株式会社ホギメディカル(3593) 2020年3月期 決算短信)

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、マスクや除菌関連、日用品や食料品など、郊外型店舗を中心に特需が発生しましたが、一方で、マスクの着用、感染症拡大を防止するための外出自粛等により、化粧品関連商品の需要が大きく低迷しました。また、WHOによるパンデミック宣言により、出入国制限が強化されたことで、インバウンド売上も大きく減少しました。
(株式会社マツモトキヨシホールディングス(3088) 2020年3月期 決算短信)

 感染管理事業につきましては91.5%増の売上高となりました。
 売上高につきましては、1月以降の新型コロナウイルスの感染拡大による消費者の予防意識の高まり等から需要が急増し、大幅な増加となりました。
(大幸薬品株式会社(4574) 2020年3月期決算短信)

一方、ドラッグストアや医療系の会社では、感染症に備える意識が高まり、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により特需が発生しました」「新型コロナウイルスの感染拡大による消費者の予防意識の高まり等から需要が急増し、大幅な増加となりました」という説明にあるように、売上増の恩恵を受けています。

 

 

特需のあった企業は「新型コロナのおかげ」を強く言わない

ネガティブな影響・ポジティブな影響の両方を見て、気づいた点。

ネガティブな影響を受けた企業は、新型コロナの影響を「これ以上悪い事業環境は、これ以降ないだろう」という感じで、かなりの長文で述べています。おそらく、このような文書を目にするのは、一生に一度あるかないかだと思います。

一方、ポジティブな影響のあった企業は、特需で売上が伸びているものの、新型コロナのことは軽く触れて、終わっています。

困っている人がいるおかげで儲けてしまったということには触れたくないというような、日本人の美学かなと思いました。というよりも、この特需が剥がれたら、実態はどうなるのか、というのを気づかれてしまうから、あえて触れないということでしょうか。

 

 

「with / after コロナ」は、どの企業も同じ経営環境

新型コロナによる、1-3ヶ月ぐらいの瞬間的な影響というのは、上に紹介した感じです。

この嵐が去るのを待つか、あえて嵐に向かっていくかは、企業経営者の判断次第です。

期間が短いようならば、過ぎ去るのを耐えるというのもありでしょう。

しかし、終わる期間が不明な場合、持久戦となり、企業のリソースがどんどんと消耗されていきます。あえて、立ち向かって、それに向けたビジネスを新たに立ち上げるというのも、企業の経営判断の一つとして考えられます。社員等の健康管理を考えれば、向かっていくのは、なかなか勇気がいることです。

 

 

来期予想を公開せず

次年度の予想は、合理的な見通しが立たないため、公開しないという企業も多数あります。

2021年3月期の連結業績予想については、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な拡大による当社グループの国内外の事業環境への影響について、合理的に算定することが困難であることから開示しておりません。連結業績予想について合理的な算定が可能となった段階で速やかに開示いたします。

 

あるいは、ある時期に終息することを前提にした見通しを発表する企業もいます。

見通しは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大による影響が上期まで継続すると仮定したものであり、終息時期によって変動する可能性があります。当該影響が想定以上に長期化及び深刻化することなどにより、今後、開示すべき事項が発生した場合には、速やかにお知らせいたします。

 

 

業績悪化は「新型コロナのせい」

「新型コロナ」による売上減のほかに、「新型コロナ」による感染対策の費用増加など、利益を生みだしにくくなります。

 一時期、環境配慮のため、使い捨て→何回も使える、電気を削減、袋を削減などで、費用を削減するのがブームだったのが、逆を行うこととなります。

ここしばらくは、業績悪化は「新型コロナのせい」というフレーズが、決算説明の要因として続くことでしょう。

 

 


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