新任取締役の経営手帳

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コロナ禍での株主総会シーズンに突入

2020年6月、withコロナ時代の株主総会シーズンが始まります。

 

コロナ禍での株主総会シーズンに突入

 

 

新型コロナウイルスの終息がまだまだ見えていません。

日本では、5月で緊急事態宣言が解除されたものの、その後自粛なのかよくわからない状態(「ニューノーマル」と称されます)が続いたまま、6月に突入しました。

6月といえば、3月決算企業の株主総会の開催ラッシュシーズンです。

5月の決算説明会開催ラッシュシーズンでは、自粛要請期間にぶつかり、従来のリアルの説明会から、オンライン等での非接触型の決算説明会に切り替える企業が相次ぎました。

決算説明会は、会社側の任意的な情報提供の一貫ですし、対象である機関投資家やアナリストなども、そういうオンライン会議に慣れているので、オンラインでの開催でも、特段大きな支障はなかったはずです。

 

しかし、株主総会は、会社法が定める会議体の一つです。また、シニア株主が多く、オンラインというのに不慣れだったり、そういう環境をお持ちでなかったりという方もいる中で、株主総会をオンラインで代替できるのか?という議論があります。

 

 

経済産業省から出されたwithコロナの株主総会の指針

経済産業省から、今般の新型コロナによる活動自粛という状況下での、株主総会対応の指針が出されています。

 

株主総会の開催延期

上場会社においては、一般的に「決算後3ヶ月以内」に株主総会を開くことが通年となっています。3月決算の企業が6月に株主総会を開催するのは、このためです。

しかし、経済産業省・法務省の見解では、

定時株主総会については、決算後3ヶ月以内に開催する会社が多いと認識していますが、会社法第296条第1項によれば、事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならないものとされており、決算後3ヶ月以内に必ず開催しなければならないとされているわけではありません

定款所定の時期に定時株主総会を開催すべきこととされている会社において、天災等その他の事情によりその時期に定時株主総会を開催できない場合には、当該状況が解消された後合理的な期間内に定時株主総会を開催すれば足りると考えられます。

というような発表がありました。

結論的には、「不可抗力により株主総会が開催できない場合、開催可能な時期に延期できる」という解釈も可能とのことです。ただし、その際には、株主名簿の基準日の設定等の一連の手続きが必要です。(臨時株主総会を開催するときの基準日設定の手続きに近いと思います。)

とくに、今回は、監査法人による棚卸し等の実査が難しい場合もあり、監査作業への影響が未知数なところがあり、計算書類の確定が遅れる可能性があります。

 

 

オンライン株主総会:ハイブリッド型バーチャル株主総会

そして、経済産業省から、こんな提案が

ハイブリッド型バーチャル株主総会はどうですか?

2020年2月に「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」というのが発表され、 法律的な見解も調べられていて、

株主総会を開催するリアルの「場所」を設けつつ、オンライン等での参加/出席を認める株主総会を実施することは、現行法上可能です。

ということになりました。

このハイブリッド型バーチャル株主総会には、以下の2種類が想定されています。

 

ハイブリッド参加型バーチャル株主総会

ハイブリッド参加型バーチャル株主総会は、遠隔地等、リアル株主総会の場に在所しない株主が、会社から通知された固有の ID やパスワードによる株主確認を経て、特設された WEB サイト等で配信される中継動画を傍聴するような形が想定される。

参加型において、インターネット等の手段を用いて参加する株主は、リアル株主総会に出席していないため、会社法上、株主総会において出席した株主により行うことが認められている質問(法314条)や動議(法304条等)を行うことはできない

 

ハイブリッド出席型バーチャル株主総会

ハイブリッド出席型バーチャル株主総会は、遠隔地等、リアル株主総会の場に在所しない株主が、インターネット等の手段を用いて株主総会に出席し、リアル出席株主と共に審議に参加した上、株主総会における決議にも加わるような形態が想定される。

現行の会社法の解釈においては、ハイブリッド出席型バーチャル株主総会を開催することも可能とされている。ただし、開催場所と株主との間で情報伝達の双方向性と即時性が確保されていることが必要とされている。

また、出席型におけるバーチャル出席株主は、自らの議決権行使についてもインターネット等の手段を用いてこれを行うことが想定されるが、これは法 312 条 1 項所定の電磁的方法による議決権行使ではなく、招集通知に記載された場所で開催されている株主総会の場で議決権を行使したものと解される点には留意が必要である。

 

「参加」と「出席」の違い

「ハイブリッド出席型バーチャル株主総会」と「ハイブリッド参加型バーチャル株主総会」で、「参加」と「出席」の文字が違うだけで、一見似たような感じですが、大きく違います。

簡単にまとめると、

  • ハイブリッド出席型バーチャル株主総会:視聴のみ
  • ハイブリッド参加型バーチャル株主総会:決議に参加可能

という感じになります。

 

詳しくは、下の経済産業省のWebサイトをご参考ください。

www.meti.go.jp

  

 

 

現実的な株主総会:株主総会開催するけど、なるべく来ないでね

しかし、実際のところ、どうなのでしょう。

私が株主となっている、いくつかの上場会社では、上のようなオンラインの形ではなく、

新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、本総会につきましては、極力、書面の郵送またはインターネットにより事前に議決権を行使していただき、株主様の健康状態にかかわらず、株主総会当日の会場へのご出席をお控えいただくようご検討をお願い申し上げます。

という文言を招集通知に記載して、「事前に議決権行使を行い、総会当日は会場に来ないでください」という対応がほとんどです。会場も、従来ような、ホテルや大型のセミナー会場ではなく、小規模な会場に切れかえている会社も見受けられます。

会社側の総会運営を行う担当者は、通常の総会運営だけでも大変ですし、 経済産業省の言う「ハイブリッド型」にすると、情報伝達の双方向性と即時性を確保するため、ネットワークや配信システムの心配までしなくてはなりません。また、今回は「変更するのに時間がない」というのが本音ではないでしょうか。

おそらく、来年2021年には、今回提示されたような、未来型のオンライン株主総会の運営形態が増えてくるのではないでしょうか。

 

 


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