日本の労働環境における女性比率について、調べてみました。
企業内での女性社員比率など、社会からの関心が高まってきています。
男女雇用機会均等法
歴史で習ったような「男女雇用機会均等法」が1985年に登場して以来、たしかに女性が社会で働く機会は増えてきました。
以前は「男性は総合職、女性は一般職」といった性差による職種の違いが明確にありましたが、私が新卒で就職活動をしていた2000年台はじめには、その違いはだいぶ薄れ、総合職の応募にも、女性が積極的に出てきていたように感じています。
ここ最近では、「女性活躍推進」という政府の政策テーマで、企業内での管理職等への女性の登用が話題になっています。
自社の女性社員の比率を調べたときに、ベンチマーク的なものがないかと思い、日本全体での状況について、現在どうなっているのかを調べてみました。
日本の労働環境における女性比率
上場企業での取締役の女性比率:3.3%
出所: 東京商工リサーチ「2017年3月期決算の上場企業2430社での結果」
株式上場企業で女性の取締役がいる会社数は748社。女性取締役の総数は957人。
数年前と比べて増えてはいるものの、なかなか難しい状況だと思います。
ちなみに、取締役総数は2万8,465人もいます。
管理職における女性比率:11.3%
出所: 総務省「労働力調査(基本集計)」(平成26年)
民間企業での部長職における女性比率:6.0%
民間企業での課長職における女性比率:9.2%
出所: 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(平成26年)より
取締役以外での、企業における幹部社員での女性比率は、こんな感じです。
民間・大企業での正社員における女性比率:21.7%
民間・大企業での非正規正社員における女性比率:69.3%
出所: 総務省「就業構造基本調査」 (平成24年)より
これをみると、企業内の女性社員は、正社員ではなく派遣社員などに多いことが数値として現れています。
民間企業だけではなく、公務員での女性比率も見てみましょう。
国家公務員での女性比率
国家公務員に占める女性の割合:18.6%
国家公務員管理職に占める女性比率:3.8%
出所: 「女性国家公務員の採用状況のフォローアップ」(平成29年4月28日内閣官房内閣人事局)
公務員も、女性比率は依然として低く、民間企業側とそれほど大差はない感じです。
現在、国家公務員の登用では、採用時の女性比率を30%にして、なんとか全体での女性比率を高めようとしていますが、依然として低い状態が続いています。
ちなみに、平成29年7月1日現在、国家公務員の数は270,377人で、そのうち女性の比率は50,222人です。
女性役員の義務化?
株式上場企業ですと、取締役への女性登用が義務化されるか、なんというウワサが聞こえてきたりします。調べてみると、5年ほど前に、こんな要請が発せられていました。
「2020年30%」の政府目標の達成に向けて、全上場企業において積極的に役員・管理職に女性を登用していただきたい。まずは役員に一人は女性を登用していただきたい。
(平成25年4月19日での安倍総理から経済界への要請)
諸外国と比べた場合、日本における女性の役員就任状況は低いので、その就任率を向上させよ、という国の急ぐ気持ちが感じられます。
なでしこ銘柄の条件
東京証券取引所と経済産業省が、女性活躍推進に優れた上場企業を「なでしこ銘柄」として選定する制度を2012年から始めています。
「なでしこ銘柄」の選定の調査項目は、
- 女性管理職比率の目標数値
- 女性取締役の目標数
- 女性正社員比率の目標数値
- 女性正社員の新卒採用比率の目標数値
- 女性活躍推進の取り組みに対する経営トップのリード(コミット)状況
- 女性活躍促進のための組織体制の構築状況
- 女性活躍促進のための横断的な推進組織の名称
- 女性活躍促進のための横断的な推進組織の最高責任者
- 女性活躍促進のための横断的な推進組織の各事業部門との連携体制構築
- 女性活躍推進に関する取り組みが反映される仕組み
- 従業員が属性に関わらず活躍できるような人事評価や制度構築についての取り組み状況
- 正社員に対する「柔軟な勤務〈場所〉を認める制度」の構築状況
- 正社員に対する「柔軟な勤務〈時間〉を認める制度」の構築状況
- 正社員に対する「多様なキャリアパス」の支援制度の構築状況
- 育児休業取得率
- 年次有給休暇取得率
- 年次有給休暇平均取得日数
- 一月あたりの平均残業時間
などです。女性社員に関する内容以外にも、ワークライフバランス的な内容も含まれています。
これらの項目とROEなどの資本利益率などのパフォーマンスが評価されて、「なでしこ銘柄」として選定されます。なお、評価内容は、年度毎に見直しされるようです。
平成28年度は、47社が選定されています。
ちなみに、偶然にも、この記事を公開する2018年3月22日に 「平成29年度なでしこ銘柄」が発表されるそうです。
取締役への女性登用のインセンティブ
今後、取締役への女性の登用が進むのかどうかという点を考えると、
- 持続的な成長ができる企業
→企業内で女性社員が活躍しやすい企業
→取締役への女性登用が進んでいる企業
ということはあると思いますが、
- 取締役への女性登用を行う
→持続的な成長ができる
ということにはならず、いわゆる「必要十分条件」ではないので、数値目標を掲げられても、企業側は躊躇してしまうでしょう。
あるいは、「女性・取締役一人につき法人税5%減税」などといった人参をぶら下げると、積極的に実施されるかもしれません。
もっとも、この問題は、男性・女性などの性差だけでなく、人種や障害者なども含めたダイバシティーやマイノリティの導入も必要だと思います。
まずは国から実践してみて、公務員や国会議員の女性比率の拡大を実現させる、ということでしょうか。
最近は、政府主導の影響もあって、「女性だから」という理由で管理職に登用しようとする動きが支配的ですが、私は賛同できません。
by 南場 智子