新任取締役の経営手帳

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任天堂/Nintendo Switchの「品切れ戦略」を模倣してみる

 

Nintendo Switchの「品薄戦略」を真似するには、どうすればいいのか。

 

任天堂のNintendo Switchに学ぶ、商品の販売戦略

 

 

まだまだ続いているNintendo Switch争奪戦

任天堂が2017年に発売した「Nintendo Switch」の品切れ状態のことを、以前ご紹介しましたが、それからしばらく経った今(2017年6月中旬現在)でも、同じ状態が続いています。

 ネットでは「Nintendo Switch」が全く買えず、ごくたまに入荷して、ネット上で売り出しても、わずか数分で「Sold Out」になってしまったり、サイトへのアクセスが多すぎてダウンしてしまったり、予約ができても手元に届くのが数ヶ月後だったり。

トイザらスなどの玩具店や家電量販店などのリアル店舗の方が、まだ買える可能性が残っていて、週に1−2回ぐらい「Nintendo Switch」が入荷するタイミングでお店にいると、買える可能性があります。お店によっては抽選販売ということもあります。

ネット販売全盛のこの時代に、ネットが機能しないという、なんだかすごい状態です。

 

 

需要の20%程度しか供給できていない

とある調査情報によると、

ニンテンドースイッチの国内販売台数が16周目で100万台を達成 ニンテンドースイッチ の国内販売台数が16周目にして100万台に達した

2017年3月に発売して2017年6月までで、日本国内に100万台の供給。

かなり適当な試算ですが、任天堂系ゲームユーザー人口が590万人とすると、供給率は16.9%。

まだまだユーザー全体に行き渡っていません。

この調子の出荷スピードでは、ユーザーに渡るのに5年ぐらいかかってしまいます。この590万人は、初期のコアユーザーなので、今後ユーザー層が拡大していくとなると、その期間はさらに長期化してしまいます。

*なお、任天堂系ゲームユーザー数が「590万人」の根拠はこちらをご参照ください。

www.8888km.net

 

 

「品薄」状態は販売戦略にとって最適?

今回の、Nintendo Switchの販売状況を見ると、任天堂に限らず、商品の販売において、スグに手に入るよりも、時間をかけた方が顧客満足度があがるような気がします。

 

人間の心理として、

なかなか手元に来ない

 ↓

人気があるから、待つのはしょうがない

 ↓

やっと手元に届いた

 ↓

待った分の満足度があがる

この「やっと手に入れた感」というのがポイントかもしれません。

 

初期のiPhoneや新型プリウスのように、予約しても手元に届くのが、かなり先になるというケースにも似ています。

 

 

「すぐに出す寿司屋」と「注文してから調理する鰻屋」

商売の基本として、顧客が望むものをすぐに出す、いわゆる「寿司屋商売」が望ましいと言われます。

顧客が望む心情は変わりやすく、欲しいときに欲しいものを提供することで、商機を逃さないということです。

 

一方、顧客が注文しても、品物がなかなか届かないというスタイルのビジネスもあります。

お客さんの注文があってから鰻をさばき調理をして、料理を供するまでに30分ほどの時間を要する「鰻屋商売」に似ています。

効率化すれば、顧客の注文があったときに、すぐに量を供するようなことも可能で、実際にそういうお店もありますが、人気のある鰻屋というのは、だいたい30分ぐらい待たされるところです。

 

飲食店といえば、お店に行くのも大変というお店があります。人気がありすぎたり、1日の客数が限定だったりというような、予約の取りにくいお店などです。

 

 

人間は手に入りにくモノを欲しがる

人間の心情として、「すぐに手に入らない」「限定」といったモノに対して「欲しい」という欲望がでて、それを得ることが一つの満足度にもなり得るのかもしれません。

通常の商品は、「利用」することで満足度を持つわけですが、このようなモノは「入手」と「利用」の2回、満足度を得ることになり、一粒で2度楽しめるような感じです。

スグに手に入れるよりも、すこし待たせた方が満足度が高くなるのかもしれません。 

 

 

売れ残る村上春樹の新作「騎士団長殺し」

「Nintendo Switch」と対照的なのが、「Nintendo Switch」と同じ時期に発売された、村上春樹の新作「騎士団長殺し」。

この村上春樹の新作「騎士団長殺し」は、今本屋に行くと、平積みで大量に置かれている姿をよく見ます。販売直後も、売り切れて、本屋から本が消えたという姿も見ていません。

メディアで発売の様子が伝えられ、販売数的には、おそらく書籍の中では売れている方なのでしょうが、大量に本が本屋にある姿を見てしまうと、「これ、本当に売れているのか?」と思ってしまいます。

いつでも買えると思ってしまうと、不思議と買わなくなります。

任天堂のNintendo Switchに学ぶ、商品の販売戦略

 

 

品薄状態は価格低下を防止する

現在では、同じものを買うならば、ネットなどで調べて、より安くお得に買うというのが一般的になっています。

購入する側から見れば、一見良さそうですが、販売する側は悲惨です。一般的な商材の場合、発売元から販売店への卸値があり、販売店も「希望小売価格」「オープン価格」が決まっています。どこかの販売店で安く売り出すと、他の販売店も追随して下げてくる、という泥仕合になってしまいます。

結果的に、発売元の卸値も下げざるを得ない状況も生まれ、本来得るべき利益が喪失し、それを誰が負担するのかというような、ババ抜きの経済学が始まります。

 

今回のNintendo Switchを見ると、ネットでの販売が少ないという状況もありますが、ほぼ定価で販売されていて、定価よりも安く提供というのは、今のところほとんど見かけません。

むしろ、品薄による入手困難という状況もあり、それでも欲しいユーザーの心情を狙って、プレミア価格を上乗せし、定価よりも高く販売しているところもあります。(これは、正規な販売店というよりは、他で定価で購入して、それを転売する専門業者です。)

購入する側には、大きく不利となりますが、発売元から見れば、価格が守られるという点が大きく、利益をキープできるということになります。

 

 

「品薄戦略」への展開方法

適度な品薄状態にすると、いろいろ意味で利点があるように見えます。「品薄戦略」とも呼べるような販売戦略に展開できるかもしれません。

  1. まずはディープな顧客群に商品を提供
  2. その顧客群でいい評判をつくる
  3. ちょっとした品薄状態を作り、購入希望者をウェイティングリスト化
    ただし、「品切れ」ではなく「品薄状態」。商品は少しづつ供給。
    可能ならば、あとどのぐらいで提供できるかを示す
  4. 購入希望者が多いという状況で「やっと手に入れた感」を出す

 

ただし、この「品薄戦略」が可能なのは、代替商品がない場合、あるいは圧倒的なブランド力を持っている場合です。そうでないと、あっという間に他の商品に購入ニーズを奪われてしまいます。

また、あまりに品切れ状態が続くと、生産能力がない会社と思われてしまいますので、会社の信用も下がってしまいますので、実行は計画をよく立ててすべきでしょう。

 

 

任天堂もようやく出荷数を増やすことを明言

2017年6月22日に任天堂が【「Nintendo Switch本体」品薄のお詫びとお知らせ】という件名でのリリースを出しました。

以下に抜粋します。

「Nintendo Switch本体」品薄のお詫びとお知らせ

現在、毎週の出荷を継続し、お客様に一台でも多くの製品をお届けできるよう取り組んでおります。また、7月、8月は、「Nintendo Switch スプラトゥーン2セット」の継続出荷も含め、今月よりも出荷量を増やしてまいります。

増産に向けた生産体制の整備と、「Nintendo Switchはいけるぞ」という確信ができたのかもしれません。

 玩具商品は、任天堂に限らず、当たり外れが大きい商品ですので、大ヒットをすることを想定して、最初からリスクを大きく取るよりも、最初に小さく出し、反応を見て増産するかどうかを見極めた方が、経営的には理にかなっています。

しかし、とはいえ、いつまでも品薄状態というわけにはいきませんので、Nintendo Switchを欲しているユーザーの手元に、早く届けらるような状態になることを祈っています。

 

 



日本ではブームに乗ったと思ったら執着しないほうがいい。それはもう売れなくなるという意味。
by 山内 溥

 

 


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