「法人税等調整額」について、今まで気になりつつも、避けていた、ちょっと調べてみました。
企業の損益計算書に現れる「法人税等調整額」
損益計算書、いわゆるPLに「法人税等調整額」という科目があります。
当期純利益の上あたりにある科目です。
税引前当期純利益 1,000
法人税、住民税および事業税 200
法人税等調整額 ▲100
税引後当期純利益 700
というような感じで使われます。
毎月の月次試算表を見ていると、この「法人税等調整額」が、ある月はマイナスだったり、別の月はプラスだったりして、奇妙な動きをすることがあります。月次報告を行う取締役会などで、「この原因はなんだ?」ということが時々あります。
「法人税等調整額」とは
「法人税等調整額」とは、wikiの説明をもってくると、
税効果会計の適用によって生じる、法人税等(法人税、住民税及び事業税)の加減算を目的に設定された勘定科目
ということになります。
ここで「税効果会計」という会計単語が出てきました。この単語も、たまに見ますが、具体的に何なのかと聞かれると、説明に困る単語の一つです。
「税効果会計」とは?
「税効果会計」とは、ふたたびwikiの説明をもってくると、
企業会計上の資産又は負債の額と課税所得計算上の資産又は負債の額に差異がある場合において、法人税等の額を適切に期間配分することにより、税引前当期純利益と税金費用(法人税等に関する費用)を合理的に対応させることを目的とする会計上の手続きである。
なお、専ら会計側からのアプローチであり、適正な税引後当期純利益を表示したいが為の調整であるので、納税額に影響はなく、節税効果とは無関係である。
税控除後の利益を企業会計の利益額に合わせる「法人税等調整額」
細かい誤りはあると思いますが、簡単にいえば、
- 企業会計の損益と税務申告に用いる課税所得は、認識時期の差で、損益額の差が生じることがある。その差異を一時差異という。
- 損益額、つまり「税引前当期純利益」が違うと、法人税等の額も異なり、税引後当期純利益が、企業会計と税務会計で異なるものが算出されてしまう。
- 「法人税等調整額」を用いて、税引前当期純利益と法人税等とを合理的に対応させる会計手続きをとることができる。これが「税効果会計」。
- この手続きにより、一時差異分の税額を増減させて、税引後当期純利益が、企業会計の税引後当期純利益に合致する。
なお、一時差異が生じる要素としては、
主な一時差異は、貸倒引当金繰入超過額、減価償却費、退職給付引当金、賞与引当金、繰越欠損金等
ということです。
企業会計に沿った税引後当期純利益を、株主・投資家に表示できるようにするため、この「法人税等調整額」という科目が現れてきたということだそうです。
税効果会計を利用した不正会計も可能?
「法人税等調整額」は、評価額などの企業側の恣意的な要素で変更が可能らしく、将来収益の認識により、一時差異の額が変わるので、利益操作として使えてしまう点も指摘されています。
以前あった事件としては
りそな銀行の2003年3月決算期において、監査法人は繰延税金資産組み入れの前提となる将来の収益性を疑問視し、りそな銀行の主張する繰延税金資産5年分を否定して、3年分の組み入れしか認めない方針を明らかにした
このため同行の自己資本比率は、国内基準である4%を大幅に下回る2%台に転落する可能性が出たため、預金保険法第102条第1項第1号に基づく資本注入が行われ、普通株での資本注入が行われた為に、りそな銀行は事実上国有化された。
本当の企業力というものは、バランスシートという勘定科目で表されるものだけではありません。
by 川西勝三