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最近の「円高」の正体

海外との取引があると、為替の動向が気になります。

 

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企業で行なっている事業の中に、国外との取引があると、為替の影響を受けてしまいます。

 

 

企業が受ける為替の影響:1円で400億円の利益が増減

輸出型の企業の場合、「円安」になる方が、国外への外貨建の売上高が、日本円換算で高くなります。

逆に、輸入型の企業の場合、「円高」になる方が、国外からの仕入値が安くなります。

 

為替の影響度は、企業の規模や業種により様々ですが、世界1・2位を争うほどの自動車生産量のトヨタ自動車では、

1円円安になると、トヨタ自動車の1年間の利益は400億円増加する

と言われています。

安倍政権になってからは、輸出型企業が多い日本の産業構造を考慮して、110-120円ぐらいの「円安」基調になっていました。 

 

 

為替の動きの基本

教科書的な話では、

  • 相手国の長期金利が上昇 → 金利差が拡大 → 相手国の通貨が買われる → 円安

  • 相手国の長期金利が低下 → 金利差が縮小 → 自国の通貨が買われる → 円高

というのが、一般的な為替の動きです。

 

2018年3月現在の日本とアメリカの金利は、

  • 日本の政策金利:-0.066%(日本 無担保コール翌日物)
  • 米国の政策金利:1.75%(アメリカ フェデラルファンド金利)

という状態です。

明らかに米国の方が金利が高い状態で、教科書通りならば「円安」に動くことになります。

 

さらに、アメリカでは、さらなる金利上昇が噂されています。

 

 

米国・FRBの新理事長による政策金利の引き上げ

日本の日本銀行のような存在として、アメリカにはFRBという組織があります。 

そのFRBの議長が、イエレン議長が任期終了で退任し、2018年2月より新しくパウエル議長が就任しました。

この新しいFRB議長であるパウエル議長は、アメリカでの政策金利の利上げを実施すると見られています。

2018年2月の就任時に、

景気や雇用情勢の改善で「物価目標の達成への確信が強まった」

という内容を議会証言をおこないました。

そして、その直後には、

米国10年物国債利回りは一時、前日比0.06%高い2.92%を付けた。

と市場が反応しました。

 

アメリカの方が金利が高くなる状況ですが、最近の円ドルの為替は、なぜか変な動きになっています。

 

 

ドル円レートは3ヶ月間で112円から104円へ

最近のドル円レートの動きをみると、金利差に関係なく(あるいは織り込み済み?)、為替レートが動いているようで、

  • 2018年1月初め:112.65円/ドル
  • 2018年1月終り:109.17円/ドル
  • 2018年2月終り:106.67円/ドル

というように円高に推移しています。

2ヶ月で約6円の円高です。

上のトヨタ自動車の例ですと、これで2,400億円の利益が消失した計算になります。

2018年3月に入ってからも、ドル円レートは一時104円台になるなど、円高の方に進む雰囲気が続いています。

 

こういう為替の不思議な動きの原因を調べてみると、FXの影響があるのでは?と思うようになりました。

 

 

1日20兆円が動く日本のFX市場

FXとは「Foreign Exchange」の英略で、 正式には「外国為替証拠金取引」といいます。 ドルやユーロなどの外国通貨(為替)を交換・売買し、その差益を目的とした金融商品です。

「証拠金取引」が一般的で、FX事業者に預けたお金の数倍以上の取引を行うことができます。

この倍率を「レバレッジ」と言い、たとえば、50万円を証拠金として預けると、レバレッジ10倍ならば、500万円分の取引を行うことができます。

 

金融先物取引業協会がまとめている、FX事業者の月間取引高の状況を見てみると、
2017年では、月間での取引量は200-500兆円。2018年2月は418兆円。

平均すると、1日あたり約20兆円が動いています。

 

 

日本のFX投資家が為替を決めている?

日銀が集計している、東京外為市場での取引量によると、円ドルは1日あたり平均8,324 百万ドル=約1兆円です。

FX取引は、株式の取引と違い、FX事業者と投資家間での相対取引がほとんどです。外為市場に流れるのは一部です。

 

上にあげた

  • FX:約20兆円
  • 東京外為市場:約1兆円

という1日あたりの取引量の数字をみると、FXの動向が、為替への影響を与えやすいというように感じます。

 

なお、世界でのFX事業者の取引高をみると、日本のFX事業者で、世界の7割を占めています。日本人は、なんとFX好きなのでしょうか。

日本人の立場から見れば、個人レベルでは、「円高」の方が、海外旅行が安くなったり、輸入品が安くなったりと、 恩恵が多いように見えてしまいます。

FXを行なっている投資家たちが、そういう「円高」への願望が強く、金利差などの経済状況を無視して、為替の動きだけで取引されている人が多いならば、それが今の「円高」相場の犯人なのかもしれません。

 

現在、金融庁で、FXのレバレッジを現在の25倍から10倍に引き下げることを検討しています。それが実現すると、この影響は少なくなるかと思います。

 

 



為替相場は、市場参加者のきわめて主観的な判断の集合によって決まっていくということです。
by 榊原 英資

 

 

 



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