今回の日銀政策決定会合が企業に与える影響は?
2018年7月31日に、日本銀行(日銀)で政策決定会合が開かれ、その内容が発表されました。
日銀の政策決定会合の内容
その内容は、簡単にまとめると、
- 長期金利:一定の変動を容認
(ゼロ%程度とした長期金利の誘導目標を、上下0.2%程度を容認へ) - 政策金利残高の見直し:マイナス金利が適用される政策金利残高を減少させる
- ETFの買入:TOPIX型重視へ
- 政策金利にフォワード・ガイダンス導入
といった内容で、基本的には従来の金融緩和政策を維持しつつ、政策の副作用の緩和などを配慮したものと言われています。
日銀の金融緩和政策の副作用
上で「副作用」と書きましたが、現在進めている金融緩和政策には弊害が顕在化しつつあります。
2013年に日銀総裁として黒田総裁が就任以来、日銀は、「量的・質的金融緩和政策」を進めています。
金融緩和策自体は、2013年よりも前から実施されていますが、2013年からは、より積極的な行動を取り始め、国債の買入、ETFを通じた上場株式の買入、金融機関資金供給などの形で、世の中に流通する日本円を増やし、日本経済の浮揚を試みてきました。
それから5年ほどが経つわけですが、その弊害が目立つようになっています。
- 国債市場の機能低下:メインプレイヤーが日銀だけになってしまい、国債買入による金利調整ができにくくなる
- 株式市場でのETF購入による株価への影響
- マイナス金利などが続くと、銀行などの金融機関の収益が減り、企業体力に悪影響
上の2番目にある「株価への影響」では、株式市場での日銀の存在が大きくなってきています。過去には、こんな記事を書いたことがあります。
今回の日銀政策決定会合では、これらの副作用も考慮した内容と言われています。実際に効果があるのかどうかは、これから試してみて、その結果次第です。
「フォワードガイダンス」とは?
今回、注目されたのは「フォワードガイダンス」という単語。
これは、
政策金利のフォワードガイダンス
中央銀行が将来の金融政策の考えをあらかじめ示す手法
と言われています。
フォワードガイダンスは、過去にはアメリカのFRBなどでも使われていて、例えば、2014年3月にFRBはフォワードガイダンスとして、以下のような内容を発表されています。
インフレ見通しが2%を下回り、インフレ期待が抑制されている場合は、ゼロ金利政策をQE3終了後もかなりの期間継続する
いきなり政策内容を発表するよりも、前提条件や考え方を事前に公表しておくことで、市場へのインパクトを和らげる効果がある感じです。
2018年7月の日銀のフォワードガイダンス
今回の日銀が発表されたフォワードガイダンスは、以下の内容です。
日本銀行は、2019年10月に予定されている消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持することを想定している。
企業への影響は?
今回の日銀政策決定会合は、投資市場では、
- 為替が円安ドル高に進行(金利が下がり、円安ドル高へ)
- 株式市場が急騰(日経平均が上昇。)
といった反応がありました。
企業側への反応は、これから現ることでしょうが、株式市場が上がったということは、業績にプラスという認識なのでしょうか。
ただ確実なのは、
- 物価上昇
- 賃金上昇
- 2019年10月の消費税増税
は、どうしても避けられないイベントでしょう。そうすると、
- 人件費が上がる
- 物価が上がり、製造原価・販管費が上昇
- 物価上昇を売価に転嫁できるかどうか
といったことを、企業は今後対応しなくてはいけません。なかなかやっかいですね。
私は中央銀行を称して「職業的嫌われ者」と言っています。
by 藤原 作弥