「プライム市場」対策、御社の対応は大丈夫ですか?
- 2022年4月、東京証券取引所の市場が変わります
- 「1部上場企業」と言えなくなる
- 今の東証1部の企業がそのまま「プライム市場」に行けるわけではない
- 「流通株式」の定義が変更
- 「流通株式」は定義も変わり、「流通株式時価総額」もハードルが上がる
- 「マザーズから東証1部」への裏口上場ができなくなる?
- 今後の移行スケジュール
- 2021年6月末が新市場への移行基準日
2022年4月、東京証券取引所の市場が変わります
2021年6月現在、東京証券取引所には、「市場第一部」「市場第二部」「マザーズ」「JASDAQ」の株式市場が存在します。(この他にも「TOKYO PRO Market」という、取引に参加できる投資家や上場できる企業に制限のある株式市場が存在します。)
2022年4月に、これら「市場第一部」「市場第二部」「マザーズ」「JASDAQ」の市場が、「プライム」「スタンダード」「グロース」の3つの市場に再編されます。
↓
「プライム」「スタンダード」「グロース」
この中で、「プライム市場」が最上位の市場に位置づけられ、現在の東証1部に相当するものとなります。
「1部上場企業」と言えなくなる
東京証券取引所・市場第一部上場企業は、「1部上場企業」という社会的なステータス・ブランドがありました。
その「市場第一部」という名前がなくなってしまいますので、当然「1部上場企業」という表現も使えなくなります。けっこう、この表現をつかった文章などは、世の中に散在しているはずなので、対応は大変そうです。
また、「プライム上場企業」という表現が、世の中にすんなりと置き換わるとも思えないので、しばらくは混乱する状態になるでしょう。
今の東証1部の企業がそのまま「プライム市場」に行けるわけではない
しかし、現在、東京証券取引所・市場第一部の企業が、そのまま「プライム市場」に移行される、というわけではありません。
現在の「市場第一部」と今後の「プライム市場」の直接上場する場合の条件を簡単にまとめると、以下のようになります。
市場第一部*従来 | プライム市場 | |
---|---|---|
株主数 | 2,200人以上 | 800人以上 |
流通株式時価総額 | 10億円以上 | 100億円以上 |
時価総額 | 250億円以上 | 250億円以上 |
収益基準 | 「最近2年間の経常利益の総額5億円以上」 または 「最近1年間の売上高が100億円以上かつ時価総額が500億円以上」 |
「最近2年間の経常利益の総額25億円以上」 または 「最近1年間の売上高が100億円以上かつ時価総額が1,000億円以上」 |
純資産 | 10億円以上 | 50億円以上 |
なお、新市場への移行に合わせて、「市場第一部」の現行基準が変更となっています。
緩和されている条件もある一方で、厳しくなったものもあります。
必要される株主数がゆるくなった一方で、業績やBSに関する基準のハードルはあがりました。
「流通株式」の定義が変更
上場基準のほか、大きな変更点の一つとして、「流通株式」の定義が変わっています。
流通株式 = 上場株式数-主要株主(10%以上保有)-役員所有株式数-自己株式数 ↓
(新定義)
流通株式 = 上場株式数-主要株主(10%以上保有)-役員所有株式数-自己株式数-国内の普通銀行・保険会社・事業法人等が所有する株式-その他取引所が固定的と認める株式
「流通株式」は、市場で日々売買されている株式を指します。
従来は、オーナー、創業家や役員などの株主が所有している分を除外していました。
新市場への移行に合わせ、「流通株式」に含められない対象者が拡大し、持ち合いなどで保有されている株式、いわゆる「政策保有株式」 は、流通しているとは認められないこととなります。
「流通株式」は定義も変わり、「流通株式時価総額」もハードルが上がる
「流通株式」は、上の新定義により、従来よりも少ない株式数に算出される可能性が高くなります。
その上、この「流通株式」に株価をかけ合わせた「流通株式時価総額」は、現行の「市場第一部:10億円」から「プライム市場:100億円」にハードルが高くなります。
「マザーズから東証1部」への裏口上場ができなくなる?
「マザーズ」や「JASDAQ」にIPOして、最終的に「市場第一部」に指定替えするというのが、株式上場企業のゴールの一つとして位置づけられています。
実は、「マザーズ」から「市場第一部」への指定替えには、時価総額250億円という本来のハードルが時価総額40億円に低くなるという、緩和ルールが存在していました。
まるで、大学付属高校・中学に入学すれば、そのまま大学までエスカレータ式で進学できてしまう感じににています。
今回の新市場への移行に併せて、この緩和ルールもなくなってしまいました。
今後の移行スケジュール
今後は、以下のようなスケジュールで移行が着々と進めていくと、東京証券取引所より発表されています。
時期 | 見直し事項 | 備考 |
---|---|---|
2021年春~ | コーポレートガバナンス・コードの改訂 | プライム市場の上場会社を念頭に、より高い水準が示される想定 |
2021年6月末日 | 移行基準日 | 上場会社に対して、7月末を目途に新市場区分の上場維持基準に適合しているか否かを通知 |
2021年9月~12月 | 上場会社による市場選択手続 | ・新市場区分の上場基準と改訂コーポレートガバナンス・コードを踏まえた選択 ・新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書の内容を開示(公衆縦覧) |
2022年4月 | 一斉移行日 | 新市場区分への移行完了 |
2021年6月末が新市場への移行基準日
上の日程の中で、特に重要なのが「2021年6月末日」。
この日の状態をもとに、プライム市場の基準に合致しているかどうかの判定が行われます。
その結果が、7月末日までに、各上場企業に通知される予定となっています。
プライム市場に行ける企業と落ちる企業が現れるわけで、
どういう結果になるのか、ちょっとドキドキ。
「プライム市場」対策、御社の対応は大丈夫ですか?