「東証1部へ市場変更承認」は喜ばしいことなのかどうか。そんな点を、少し調べてみました。
JASDAQやマザーズ市場に上場した企業の社長さんなどから、「東京証券取引所市場第1部へ市場変更承認」というお知らせをいただくことがあります。
すでに上場した市場から、東証1部へと変えるのは、メリットがあるのでしょうか。
そんな点を、少し調べてみました。
東証一部上場企業というブランド
「東証1部企業」というと、
- 就職しても安心
- 取引しても安心
- 商品を買っても安心
などのような、社会的に信頼感のあるというブランドイメージが、日本にはあります。
昨今の企業不祥事等を見ると、必ずしもそういう安心神話が成立するとは言いにくくなっています。しかし、社会通念上の常識というか、いわゆるコンプライアンスが求められるので、悪いことはしにくい状況と言えます。
東証1部上場企業になると、株価が上がりやすい?
東証1部に上場すると、TOPIXの算出銘柄に加わります。
TOPIXとは、ニュース等で、その日の株式マーケットの状況で伝えるのに登場する指標です。。。詳しくは以下になります。
TOPIX(東証株価指数)とは、東証市場第一部に上場する内国普通株式全銘柄を対象とする株価指数です。昭和43年(1968年)1月4日の時価総額を100として、その後の時価総額を指数化したものであり、日本経済の動向を示す代表的な経済指標として用いられるほか、ETFなどの金融商品のベンチマークとして利用されています。
(東京証券取引所HPより)
TOPIXに連動したファンドなどは、TOPIX構成銘柄を購入することになります。
また、昨今、株式マーケットが大幅下落した際に、日銀による買い支えが行われますが、そのとき購入するのは、TOPIX系のETFです。
つまり、東証1部に上場すれば、そのようなファンドからの株式の買いが入ることになります。
そういう意味では、従来の市場に上場していたときよりも、株価が上がりやすい環境になると言えます。
東証1部への市場変更に必要な条件
- 株主数:2,200人以上
- 流通株式:2万単位以上・上場株券等の35%以上
- 時価総額:250億円以上
- 事業継続年数:3か年以前から取締役会を設置して、継続的に事業活動をしていること
- 純資産の額:連結純資産の額が10億円以上
- 利益の額又は時価総額:最近2年間の利益の額の総額が5億円以上であること、または時価総額が500億円以上
- 虚偽記載又は不適正意見等:最近2年間の有価証券報告書等に「虚偽記載」なし、など
東証1部に市場変更をするには、上記のような条件が課されます。
利益は自助努力で、株主数に関しては立会外分売などで対応する事が可能です。時価総額(株価)に関しては、どうすることもできませんが。。。
また、改めて上場審査を受ける必要があります。
東証1部へ市場変更に必要な費用
- 東証2部→1部:審査料400万円
- マザーズ→1部:審査料400万円+新規上場料1,500万円-調整費
- JASDAQ→1部:審査料400万円+新規上場料1,500万円-600万円
上場審査を行いますので、東京証券取引所に支払う審査料が必要となります。(主幹事証券の審査も必要となり、審査に伴う指導を受けると、それ相当の費用が別途必要となります。)
また、上場後には、年間上場料も若干高くなります。
結論
「東証1部へ市場変更承認」は喜ばしいことなのかどうか。
ハードルは高いですが、日本においては企業が到達すべきゴールの一つとも言えますので、これはこれで喜ばしいことなのだと思います。さらに、株価は市場の影響を受けやすく、それこそ日本経済の浮き沈みを受けやすくなります。
また、以下にも注意です。
注意:東証が進めている株式市場再編
現在、東京証券取引所では、
大企業向けの一部、中堅企業向けの二部、多様な企業で構成するジャスダック、成長企業向けのマザーズの四市場から、仮称として一部は「プライム」、二部とジャスダックは「スタンダード」、マザーズは「グロース」とする
のような市場再編について協議を進めています。
上で紹介したTOPIXの構成銘柄も、今の東証1部上場の全企業から、「プライム」と「スタンダード」からピックアップする形になる可能性もあります。
そうすると、今までの東証1部であることのメリットが少し薄れてきます。