ITベンチャーの波乱万丈ストーリーかと期待して読んでみると、かなり単調な話の展開で、しかも実話だった。「事実は小説より奇なり」というわけにはいかない。
久しぶりに高杉良さんの経済小説を読みました。
読んだのは「雨にも負けず 小説ITベンチャー」
本の表紙から、ITベンチャーを題材にしているような雰囲気が感じられ、1990年代後半のインターネット黎明期に、電子小包という概念で創業した「e・パーセル」という会社の話で、興味を持ち、読んでみることに。
詳しくは記述されていないが、「e・パーセル」は、昔あった「宅ふぁいる便」のような、データの送受できるサービスで、セキリュティやシステムをもっと堅牢にしたサービスのようなものだと想像。
本の話を読みすすめていくと、ここではあらすじは詳しくは述べませんが、ITベンチャーの波乱万丈ストーリーを期待していたら、かなり単調な話の展開。しかも、大企業と提携したり、ビジネスチャンスを得て大きく成長したりといった場面はなく、話の大半は、ベンチャー社内の内輪揉め。
なんだか、ITビジネスの話でなくてもいいのでは?と思ったりしました。「電子小包」という、こんな地味な商材でインターネットに入ろうとするなんて、話のネタとして小さい。インターネットやITビジネスの世の中の展開の速さに、さすがの巨匠も、ストーリーの構想力に限界が来たのかと思っていたら、これは実話。
たしかに、高杉良さんの小説は、事実ベースの話が基本で、架空の会社名でないかぎりフィクション性が入ることが稀だから、実話ならばしょうがないかという感想。すべてが「事実は小説より奇なり」というわけにはいかない。
経済小説を書く、他の作家さんは、社会事件などをベースにしたフィクションなどが多く、そういうものは、話に強弱をつけて、ストーリーの展開を面白くする。実話だけだと、ストーリーの面白さを高めることに限界があり、史実をなぞるだけになってしまうと感じました。
ところで、小説のテーマとなった「e・パーセル」の会社は、現在も活動をされていて、webサイトでは、事業概要なども見ることができます。webサイトにある沿革を見ると、「雨にも負けず 小説ITベンチャー」の場面を思い出してしまいます。