新任取締役の経営手帳

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電力を作らない 電力会社の末路。。。

どうなる?「新電力会社」

 

電力を作らない 電力会社の末路。。。

 

 

以前は、北海道電力・東北電力・東京電力・北陸電力・中部電力・関西電力・中国電力・四国電力・九州電力・沖縄電力など、地域ごとに大手電力会社があり、電気を利用する場合には、お住まいの地域の電力会社の電気を契約して利用するというのが一般的でした。

電力自由化で、その構図が一変してしまいました。

当初は、工場や大規模ビルなど、限られた利用者しか自由に契約することができませんでしたが、

  • 2000年3月:「特別高圧」区分の大規模工場やデパート、オフィスビル
  • 2004年4月・ 2005年4月:「高圧」区分の中小規模工場や中小ビル
  • 2016年4月:「低圧」区分の家庭や商店

というように、電力自由化の範囲が段階的に拡大し、今では完全自由化となりました。

 

地域関係なく 好みの電力会社と契約できる

たとえば、北海道の一般家庭の人が、九州電力と契約することが可能となりました。

しかし、北海道の人が九州の電力会社と契約しても、使う電気は九州で作られた電力になるかというと、そういうわけではなく、従来通り、北海道で作られた電力です。(仮に、九州で作られた電力を北海道に伝送できたとしても、かなりの電力ロスが発生していそうです。)

たとえば、東京電力管内で停電した場合、関西電力と契約している東京電力管内の利用者には、停電にならずに、そのまま電気が使えるかというと、そういうわけでなく、周りの東京電力利用者と一緒に停電となります。

 

電力を作らない電力会社

電力自由化により、地域の制約だけでなく、自社で電気を作っていない会社とも、電気の購入先として契約が可能になりました。

電力の販売会社には、契約先での利用量分の電気を調達することが求められています。つまり、電気の販売利用先での電気利用量を満たす分の、電力の販売会社は電気量を所有している必要があります。

自社で発電施設を持たない電力会社は、電気の卸市場ができていて、そこから契約販売する数量分を確保すれば、基本的には済んでしまいます。

これにより、電力を作らない会社が、電力を販売することができるようなりました。

その調達する電気を、販売している契約単価よりも安く調達できれば、そのサヤが利益となるビジネスモデルです。逆に、電気の卸価格が上回ってしまう場合、損となってしまいます。

 

「新電力会社」の誕生

このような電力会社を「新電力会社」と称して、新しいビジネスモデルとして注目が集まりました。

これにより異業種からの参入が進みました。

たとえば、従来の電気料金と比べて魅力的な料金体系だったり、携帯電話会社で電力契約を結ぶと、携帯料金を割り引いたりすることができたりなど、いろいろキャンペーンが産まれました。

 

潰れる新電力会社

ところが、
2021年以降、この新電力会社にとって、厳しい状況が続いています。

原因の一つが、電気単価の高騰です。
電気のもととなる、エネルギー価格等の高騰が大きく影響していました。
これにより、電気を調達してくる卸売市場での電気価格も高騰。

販売価格を固定にしている電力会社にとっては、販売価格よりも高い価格で調達するということも起こり、損が出る状態、いわゆる「逆サヤ」状態となってしまいました。

帝国データバンクが発表している「「新電⼒会社」事業撤退動向調査(2022年11月)」によれば、

2021年4月までに登録のあった「新電力会社」(登録小売電気事業者)706社のうち、11月28日時点で21%を占める146社が倒産や廃業、または電力事業の契約停止や撤退などを行ったことが分かった。3月末時点では31社だったが、6月には104社に急増、その後も増加が続き3月末から11月までで5倍近くに達した。 

 

弱体化する電力業界

「電気はお住まいのエリアの電力会社と契約する」といった規制が効いていた時代には、電力会社はきっちりと利益を取ることができていました。「電力会社」は、安定した好業績の業態で、投資先としても非常に魅力的なものでした。

それが、電力販売自由化により、電力会社間で顧客獲得戦争が起こると、顧客獲得のためのキャンペーン、また電力の販売単価を他よりも安くする、といったことが起き、利益を下げることになります。

本来であれば蓄積された利益から発電設備等への投資を行い、企業としての資産に繋がりましたが、そのような利益の減少は、そういう抑制となり、結果的に見ると、業界全体としては、弱体化に向かっているのではないでしょうか。

 

ガス・水道といった規制産業の行方は?

電気だけでなく、ガスや水道も、このような流れになっています。

利用者向けに魅力的な提供価格の実現と称して、一時的なコスト削減目的が、結果的に不幸な結果にならないことを祈ります。

 


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