国産ジェット機「三菱スペースジェット(MSJ)」の事業化を中止に。
2023年2月6日、こんなニュースが飛び込んできました。
国産ジェットから撤退 採算見込めず、開発中止へ―三菱重工
三菱重工業が、国産初の小型ジェット旅客機「スペースジェット」の開発を中止する方針であることが6日、分かった。開発の遅れや新型コロナウイルス禍による旅客需要の冷え込みを受け、2020年に開発を事実上凍結していたが、今後も採算が見込めないため事業から撤退する。08年に「日の丸ジェット」の実現を掲げて始まった一大プロジェクトが頓挫した形になる。(時事通信より)
日本国産のジェット機の夢
日本国産のジェット機として開発を進めてきたMSJ。三菱重工のMSJ開発会社も解散となります。日本では、ホンダが、旅客機ではなく、小型ビジネスジェット機を製造をしているので、まったくジェット機を作っていないわけではありませんが。期待が高かっただけに、この中止はかなり残念です。
世界で多く飛んでいるエアバスやボーイングの飛行機には、日本の会社の技術や製品が使われていて、パーツ的には基礎的な技術はあるとは思うのですが、飛行機という一つの製品にするには、やはり難しかったのでしょうか。
私は、内部の関係者でも三菱重工ウォッチャーでもなく、本当はどういった事情があったのか、わかりませんが、政治的なものがあったのかもしれません。
幻の世界のデファクト・スタンダード 日本発のOS TRON
今回の、この中止を聞いて、1990年代ごろにあったTRONプロジェクトのことを思い出しました。
TRONプロジェクトとは、簡単にいうとこんなものです。
TRONプロジェクト(トロンプロジェクト)は、坂村健による、リアルタイムOS仕様の策定を中心としたコンピュータ・アーキテクチャ構築プロジェクトである。1984年6月開始
(wikiより)
マイクロソフトのWindows、AppleのiOSやGoogleのAdoroidのような、コンピュータを動かすための、日本発のOSが実はありました(今もあり、現役です)。
1990年代当時、TRONのOSは、他のOSよりも優れていて、世界のデファクト・スタンダードになるのでは?と期待をされていましたが、大人のいろいろな事情により、それが阻止されてしまいました。
普通のPCにはTRONが大きく普及することはできませんでしたが、工業用などのOSには、かなり普及しています。
TRON系OSは2000年代以降も、主に炊飯器・洗濯機・カメラ・ゲーム機などと言った日本メーカーの家電製品に搭載されたマイコンを制御するための組み込み用OSとして、広く使われている
(wikiより)
このTRONは、オープンソースとして公開されていて、ライセンス条件も変更等も自由とゆるやかだったので、メーカーなどの導入先のニーズに合ったものに変えることができたのが、普及できた要因の一つではないでしょうか。
今でも、TRONは広く使われていて、任天堂のゲーム機 Nintendo Switchの中にも動いているとか。
当時は、パソコンのOSとしても期待がされていて、1980年代での学校教育用のOSとして使おうと日本の省庁が動き、日本の電機メーカーも自社のPCにTRONを搭載しようと準備をしていたようです。
ところが!
1989年4月、アメリカ合衆国通商代表部(USTR)が発表した「貿易障壁年次報告」においてTRONが取り上げられ、スーパー301条に基づく制裁の候補とされるなど、日米貿易摩擦を背景とした米国からの圧力にさらされた。なお、スーパー301条とは、市場における不公正な取引慣行に対して撤廃を求めて米国が対象国との交渉を行い、もし撤廃されなければ高額な関税などの制裁を課すというもの。
(wikiより)
このアメリカ側の圧力がきっかけで、TRON搭載PCの小学校への導入は当初の予定どおりに実現しなかったと言われています。
その間に、1995年を迎え、あのWindows95が発売。日本のPCのほとんどが、Windowsに傾斜していきました。ちなみに、その当時のMacは、昔のMac OSで、今のとは全く違い、ちょっと問題児で、Macが売れずに、Appleが経営危機に入りかけていた時期です。
もし、TRON搭載PCが日本の教育現場に普及していたとしたら、今でこそ子供向けのプログラミング教室が一般化していますが、それが30年ぐらい前に実現し、今のIT・インターネット業界は、まったく違ったものになっていたかもしれません。
大人の事情があったのかなぁ?「型式証明の取得」
MSJは、機体はできあがったものの、製品として販売するために必要な型式証明の取得に時間とお金が相当要することが見込まれ、採算が合わずに、今回の開発中止になったと報道されています。
そして、型式証明は、アメリカの連邦航空局(FAA)が管理をしていて、その審査内容は、明確化されずに審査官の経験にもとづいたものが多く、MSJを作った三菱重工にとって経験が少ないため、かなり負荷の大きい作業になるだろうとのことです。
飛行機は、人の命に関わる乗り物ですので、しっかりと審査をしていただきたいとは思いますが、アメリカの連邦航空局は、アメリカのお役所ですので、このままMSJを販売させると、自国のボーイング等の航空機メーカーが不利になると思い、ひょっとしたら、故意に審査を難しくさせていたのでは?と思ったりしもします。真意はわかりませんが。
まぁとにかく、今回は残念な結果でした。。。このMSJの開発には、これまで1兆円もの投資がされてきたとのことです。今までの成果が、何か別の形で生きてくることを願います。