上場企業が自社の株価を伸ばしたいと思うならば、こういう方法もあります。
- 株主の大きな不満となる、伸びない株価
- 株価を伸ばしたい企業
- 株価は誰が決める?
- 企業価値の分割が株価
- 一株あたりの利益と株価の関係
- 一本150円の大根と一本1000円の大根どちらを買う?
- 株式が品不足になると、株価は上がる
- 株価を10倍にする方法
事前にお断りをしておくと、ここで述べる話は、この企業に投資して儲けましょう、という類の投資家側の話ではなく、企業側の話です。
また、この方法で効果があるのは、ある一定の条件を満たしている企業になります。
株式を上場している企業にとって、自社の株価というのは、気になる存在です。
創業社長であれば、自分の持分の株式資産額が、何億円〜十億円の増減を日々繰り返したりします。ちなみに、その株式を売却処分をしない限り、現金とはならず、創業者や経営陣が自ら所有する株式を売却する機会というのは、あまりないので、絵に描いた餅的なものではあるのですが。たまに、そういうことをする企業もありますが、だいたいそれは、経営者が企業を捨てるケースです。
企業内だけでなく、その企業に投資している株主も、株価は非常に気になります。時間があれば、株価をチェックしたりされます。業績が伸びている企業の場合、長期的に見れば、株価もそれに連動した動きとなります。しかし、日々の株価というのは、それ以外の要素で形成されます。
株主の大きな不満となる、伸びない株価
今まで、時価総額が1兆円を超える企業から、数十億円ぐらいの企業まで、いろいろな業種業態の企業の投資家・株主対策に関わらせていただき、わかったのは、
株価が伸びない企業は、(一般個人の)株主の満足度が低い
ということです。
(一般個人の)株主に、その企業に対する満足・不満などのアンケートを取って見ると、その不満の原因の約9割はこれです。
自分が買った株価よりも、現在の株価が低い、いわゆる「評価損」となっている状態の投資先に対して、かなり否定的な感情をもたれてしまいます。
経験則で言えば、こういう不満因子の強い企業の場合、株価が伸びることは、よほどのことがしない限り、ありえないです。
一般生活者向け消費財などを扱っている企業の場合、(一般個人の)株主は、企業の応援団ともなりえ、投資先の自社製品を、一般生活者よりも多く購入するということがあります。
しかし、不満の感情を持っている株主には、あまりそういう応援は期待できなくなってしまいます。
なお、大きな「評価損」となり、企業に対する「不満」という感情を持たれるのであれば、その企業の株式を処分し、「損切り」してしまったら、と思うのですが、多くの(個人)投資家は、株価が再び伸びることを期待してか、株式を売らずに、持ち続ける方も多いのです。損切りして、他の利益と相殺した方が、税制上もいいと思うのですが。。。
株価を伸ばしたい企業
株式を上場している企業ならば、自社の株価は、低いよりも高い方がいいと考えます。
株価が伸び悩んでいる、企業の経営者は、そういう株主からの圧力もさることながら、株価を伸ばしたいと思っています。前述の自分の資産額以外として、
一つ目には、株価が安すぎると、どこからか株式を買収されてしまう、いわゆるTOBリスクの存在。
二つ目には、同業ライバル社との比較。同業他社も上場している場合には、そことの比較で、気にする社長らも。
株価は誰が決める?
テレビの経済系ニュース番組やWebなどで、日々の株価が流れています。
「株価」というのは、一見すると、偶然の産物のような感じで、なぜこの価格なのか、というのが、普通の人には、よくわからないものと思われがちです。
実際は、株価は適当につけられているわけではなく、それなりの根拠をもとに、価格がつけられています。
ここでは、
- 利益を増やす方法
- 株式を品薄状態にする方法
を取り上げます。
企業価値の分割が株価
一株あたりの株価を株式総数で掛け合わせると、その企業の時価総額:企業価値が算出できます。逆を言えば、株価を考えるときに、この「企業価値」というのが、重要な要素となります。
企業価値の算出方法はいろいろあり、また評価する人によって様々です。
いくつかの算出式をあげれば、
企業価値:時価総額
= 株価 × 発行済株式数
= 利益 × 株価収益率
= 将来獲得利益の現在価値
などなど
企業価値の前提となるのは「利益」。事業が成長して利益も伸びていく場合もあれば、安定期となり利益は一定、などいろいろなパターンがあります。
利益の今後何十年間分の総和が「企業価値」として算出されます。
一株あたりの利益と株価の関係
業績が成長していく企業で、費用率が一緒ならば、利益総額も自ずと増えていきます。企業価値も増えて、株価も伸びていくことなります。
しかし、そうでない企業の場合、利益総額ではなく、企業価値は伸び悩みます。
こういう企業の場合、一株あたりの利益を増やすことで、株価を伸ばせる可能性があります。たとえば、自社株買い・株式併合などで、発行済株式数を減ずることで、一株あたりの利益が増えていきます。
一株あたりの利益が増えると、その株価収益率が一定ならば、株価も伸びていくことになります。
事業の安定期に入り、売上高や利益が一定水準を保つような状況であれば、内部留保が貯まりやすい。そうした資金を利用して、自社株買いなどを行うと、株価も増えて、株主に対する株主還元にもなりえます。
次に 「株式を品薄状態にする方法」です。
一本150円の大根と一本1000円の大根どちらを買う?
ここに、大根があったとして、その価格が150円と1000円の大根があったならば、どれを買いますか?
こういう安い・高いという判断は、本来の価格、この場合は、日頃の流通価格を知っているからこそ、できることになります。
大根に対する、一般的な相場観というのを持っている人ならば、普段の流通価格がだいたい200円ぐらいで、150円というのは安いと判断できます。
あるいは、一本1000円の大根は、普段よりも高い価格ですが、品不足で野菜価格高騰していたり、あるいは、稀少生の高い品種だったり、味などにこだわりの大根なのかもしれません。
野菜に限らず、株式なども品薄となると、価格は上がりやすくなります。
株式が品不足になると、株価は上がる
株式は、日々取引所で売買されています。
取引所で流通する株式の総量は、基本的に一定です。企業が売出しや新規発行した株を、投資家間で売買しています。野菜や製品のように、日々生産されたものが次々と流れているわけでありません。
株式の品不足状態に近づけるには、「株主数を増やす」「株式の長期保有を促す」という方法があります。
市場から株式を購入・取得し、それを長期で保有していただく。そういう株主を増やしていくと、株主が保有する保有株式が増えて、市場に出回る株式の量が減っていきます。
もっとも、長期で保有していただくには、その企業の株式を長く保有するメリットがないと難しいです。
「事業が安定的に成長していて、株価もきちんと伸長している」「毎期、安定配当を出している」「長期保有型の株主優待制度がある」などが、そうしたものになります。
株価を10倍にする方法
今回の内容をまとめると、以下になります。
- 企業価値を増やす
- 一株あたりの利益を増やす
- 長期で保有する株主を増やす
簡単に書きましたが、実際に実行するとなると、思ったように簡単にはいかないのが、この「株価」の世界です。
企業の「稼ぐ力」が最も重要。
企業価値が向上し続けなければ、株価にも反映されません。
by 日比野 隆司