成功した子会社が上場してくれることで、初期投資を回収できるメリットもある。事業としても上場益が得られ、早く投資回収すれば、もっと次に回せる
by 岡田 元也
2018年12月、携帯電話会社のソフトバンクが東京証券取引所に上場されました。
- 2.6兆円という大型の資金調達
- IPO直前の大規模通信障害
- 初値が公開価格を割る など
いろいろな話題を産みました。
親会社であるソフトバンクグループ(証券コード:9984)も従来から上場されていて、今回の子会社であるソフトバンク(証券コード:9434)の上場は、いわゆる「親子上場」という状態になります。
それにしても、従来の上場されていたソフトバンクは「ソフトバンクグループ」という名前で引き続き上場されていますが、今回の子会社「ソフトバンク」と同じ社名で紛らわしいと思うのは、私だけでしょうか?
「親子上場」の問題点
「親子上場」自体は法的に問題はありませんが、
親子上場に存在する「ガバナンスの問題」
- 50%だけの株式保有により、100%の意思決定権を用いて、企業を親会社のために利用
- 支配株主が少数株主の利益を奪う
参考資料)https://www.rieti.go.jp/jp/projects/cgp/pdf/obata.pdf
といった点を指摘されていて、米国では批判の対象とされています。
日本でよくみかける親子上場
しかし、日本では、今回のソフトバンクに限らず、親子上場はよく見かける状態です。
たとえば、日立製作所(6501)を例にすると、このような関連会社が上場しています。
- 日立キャピタル (8586)
- 日立化成 (4217)
- 日立金属 (5486)
- 日立建機 (6305)
- 日立造船 (7004)
- 日立物流 (9086)
上記のうち、日立造船と日立物流を除いた会社では、親会社である日立製作所が株式の約50%を保有しています。
親会社が50%以上の株式を保有している子会社は、株式の買い占め等で他者に乗っ取られるという危険はなく、安定的な経営がしやすいという点があります。
逆に、子会社の経営に親会社の意向が入りやすく、投資家側からすると、自分たちの立場が軽んじられるといった点などが、ガバナンス上の問題として言われています。
欧米的な視点では、この「親子上場」は問題視されますが、護送船団的な感じでグループ内の親会社と子会社が同じ方向を向くことで、グループ全体の企業力を発揮できるというのは、日本的な経営スタイルに合っているように感じます。(そもそも、そういう子会社は上場する必要はないのではないのか、という議論もあります。)