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400兆円を超えた「内部留保」に対する誤解

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企業の内部留保400兆円突破。
「内部留保が増えている = 設備投資が進んでいない」という誤解?

 

400兆円を超えた「内部留保」に対する誤解

400兆円を超えた「内部留保」に対する誤解

 

 

2017年9月のNHKのニュースで、こんなのが流れました。

企業の内部留保 昨年度 初の400兆円超

 

企業が事業のもうけのうち配当や設備投資などに使わずに蓄えとして手元に残している「内部留保」が昨年度、初めて400兆円を超え、過去最高になりました。政府は内部留保を賃上げや設備投資に充てるよう促してきましたが、企業の慎重な姿勢が浮き彫りになりました。

 

企業が利益を貯め込んで、けしからん的な論調です。

 

 

会計を知らない人が勘違いする「内部留保」

たしかに「内部留保」というのは、事業年度ごとに企業で利益が出て、その利益から配当金などを支払った後に残った累積です。

内部留保とは、基本的には企業の利益金額から役員賞与、配当、役員賞与金、租税などの社外流出分を除いた部分を社内に保留することである。

 

ここで問題なのは、「内部留保」=「現金を貯めている」というイメージがあることです。

 

 

「現金」とは限らない内部留保

貸借対照表という、企業の資産を表したものがあります。

簡単に図式化すると、以下のような感じになります。

 

貸借対照表の概略図

 

貸借対照表の右側「負債・資本の部」:どのような形であつめたお金なのか

貸借対照表の右側というのは、「負債・資本の部」と言います。

ここは、企業体の中で動いている事業資金がどのようにして集められたのかを表します。

 

上が「負債の部」で、企業が外部から借りているお金で、

  • 銀行から借り入れ
  • 社債の発行
  • 商品の仕入れなどで、まだ払っていない費用
  • まだ納めていない税金

などがここに入ります。

さらに分けると流動負債・固定負債に分かれ、借り入れの期間により分類が変わります。

 

「負債の部」の下が「純資産の部」で、

  • 株主からの出資金
  • 資本剰余金
  • 利益剰余金

などがここに入ります。

 

内部留保は、「利益剰余金」のことで、「純資産の部」に分類されます。

今までの事業活動により、利益がたまり、その利益が、会社の使えるお金となったことがわかります。

 

 

貸借対照表の左側「資産の部」:お金の割り当て状況

貸借対照表の左側が「資産の部」といい、右側の「負債・資本の部」で集めた事業資金が、どのような形になっているかを表します。

 

上が「流動資産の部」で、

  • 現金
  • 銀行口座にある預金
  • まだ受け取っていない売上

など、企業がすぐに使える形の状態のものが、この「流動資産の部」に入ります。

 

下が「固定資産の部」で

  • 土地
  • 工場などの施設
  • 機械・設備

など、企業内で稼働している事業資産が、この「固定資産の部」に入ります。

 

 

NHKも間違える「内部留保が増えている = 設備投資が進んでいない」という誤解

上の貸借対照表の概略図を見るとわかりますが、「内部留保」と「設備投資」というのは、扱うのが違うものです。

設備投資に必要なお金を、

  • 銀行などの借り入れで行なったのか
  • 企業内のお金で行なったのか

ということは分析できますが、「内部留保が増えている = 設備投資が進んでいない」というのは、この内部留保の金額だけではわかりません。

 

 

日本企業の設備投資額は伸びている

 今回のニュース「企業の内部留保 昨年度 初の400兆円超」の発端となった財務省の発表情報:年次別法人企業統計調査 概要 -平成28年度- を見ると、企業の設備投資の状況も集計されています。

 

年度 設備投資額(億円)
2011年 333,165
2012年 346,431
2013年 369,290
2014年 398,228
2015年 426,365

 

これをみると、ここ5年ほど、設備投資額が増えていて、
「内部留保が増えている = 設備投資が進んでいない」
とは読めないのですが。。。

 

財務省の年次別法人企業統計調査 概要 -平成28年度-
https://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/results/h27.pdf

 

 

日経は「企業の設備投資は当面、強めの基調が続きそうだ。」と報道

さすがの日本経済新聞社は、この統計数値を読み間違えずに、

企業の設備投資は当面、強めの基調が続きそうだ。

2016年度の内部留保は400兆円を突破するなど元手資金は潤沢。

人手不足を補う投資や五輪需要などがけん引するとの見方が根強い。

と報道していました。

 

NHKは、経済専門ではないとはいえ、それを見て信じてしまう視聴者も多いわけなので、誤解するのはどうなのかなと思いました。

 

 



余裕資金は保険の意味を持つ。銀行は簡単に貸してくれないし、社債を発行すればリスクを伴う。自前で資金を持ち、必要な時に自由に使えるようにしておくことが必要だ。
by 山内 溥(任天堂・元社長)



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