会社はいくら債務超過であっても、負債が多くあっても、足元の資金繰りがまわれば、継続することができます。
by 川北 英貴

決算書を見てビックリ!
資金調達の相談にのってほしいという会社があったので、決算書をみると。。。
累損が資本金を上回り、株主資本がマイナス!
その会社は、創業して3年目ぐらいの会社で、初年度での先行投資的な費用の発生で、大きな損失が発生していました。その損失の金額が大きく、資本金を上回っている状態です。
いわゆる「債務超過」の状態です。
債務超過(さいむちょうか)とは、債務者の負債の総額が資産の総額を超える状態。つまり、資産をすべて売却しても、負債を返済しきれない状態である。
「債務超過」になっているからと言っても、即それが倒産というわけではなく、資金繰りができるならば、事業は継続することができます。
ただ、金融機関などでは、この「債務超過」は嫌がります。
銀行などの市中金融機関では、債務超過を新規の貸付ができない条件とすることが多く、特別な事情のない限り、この状態で新たな貸付を期待することは困難である。
そして、この会社さんは、金融機関への融資の申込を検討されていて、このままの決算書では難しいと思い、以下のアドバイスをして、決算書をキレイにすることにしました。
- 役員への未払報酬を株式化(「デットエクイティスワップ」)
- 役員からの借入金を株式化(「デットエクイティスワップ」)
- 創立費・開業費の期間按分
デットエクイティスワップ( Debt Equity Swap)
英名称の頭文字「DES」から「デス」ともいいます。
「デットエクイティスワップ」という字面をみると、何かたいそうすごそうな感じがしますが、未払債務を株式に変換する方法です。簡単に言えば、帳簿上、BSの上から下に振り返る感じになります。

手続きとしては、通常の株式発行による増資と一緒です。
- 株主総会の招集手続き
- 株主総会の開催:新株発行の決議、割当決議
- 効力発生
- 増資の登記
通常の増資では株券と引き換えにお金を銀行の口座を振り込むわけですが、この「デットエクイティスワップ」では、お金そのものでなく、金銭債権(会社が本来払わないといけないお金)を現物出資することになります。
ベンチャー企業の創業者が、創業期のVC等の外部の投資家が入る前に、外部からの受入出資金額が増えても、創業者の株数比率を上位に保つするため、自分の給与を未払いにして、それを株式化して、創業者の持株数を増やすのにも、このこの「デットエクイティスワップ」がよく使われています。
創立費・開業費の期間按分
また、費用を繰り延べして、単年度の損失をなるべく少なくするようにします。
設立までにかかった費用は「創立費」とし、設立時から営業開始時までにかかった費用は「開業費」として処理します。 創立費は、法人税法上も繰延資産となりますが、会社が計上した創立費の償却額を損金の額に算入することができます。
創立費・開業費は、単年度の費用として計上するだけでなく、5年以内の期間、複数年に渡って費用を按分することができます。
なお、創立費・開業費として扱えるのは、以下のよう内容です。
「創立費」
・会社を設立登記するために必要な登録免許税
・創立総会の費用
・証券会社などの金融機関の取扱手数料
・発起人への報酬
・事業に従事する使用人の給与
・創立事務所などの賃借料
・株主を募集するための広告費
・株式申込証、目論見書などを印刷する費用
・定款やその他の規則を制作するための費用
など
「開業費」
登記完了後から営業活動を始めるまでの期間に「特別に支出した」費用
・開業のためのチラシ、広告などの制作費・広告宣伝費
・名刺を作るための費用
など
その後、冒頭の会社さんは、 無事融資を受けられたそうです。