上場すれば株主総会で「あれも駄目、これも駄目」と言われる。
by 重光 武雄

取締役や監査役は、取締役は2年ごと監査役は4年ごとというように、何年かおきに株主総会にて選任を行なわなければいけません。
なお、監査等委員設置会社の場合は、監査等委員でない取締役は1年ごと、監査等委員である取締役は2年ごとの選任手続きが必要です。
この取締役・監査役の選任議案というのは、個人株主がほとんどの企業やオーナー系の企業ならば、そのまま障害なく決議されますが、株主にファンドなどの機関投資家がいる場合、この議案は要注意です。
ISSなどのような議決権行使助言会社には、取締役や監査役に対する反対条件があり、その条件を満たしてしまうとその候補者に「反対」という推奨を公表してしまいます。
たとえば、監査役の場合。
監査役の反対条件
問題のある候補者の場合、監査役(取締役)としてふさわしくないという判定をされます。
ISSでは、以下の条件に該当すると「反対」となります。
- ISS の独立性基準を満たさない社外監査役
- 前会計年度における取締役会もしくは監査役会の出席率がどちらか一方でも75%未満である社外監査役
- 株主の利益に反する行為に責任があると判断される監査役
- 他社での取締役や監査役としての行動に重大な懸念があり、当会社の監査役としての適性に大きな懸念がある場合
社外取締役(社外監査役の)の独立性基準
上記にあるISSの独立性基準とは、以下のような内容です。
- 会社の大株主である組織において、勤務経験がある
- 会社のメインバンクや主要な借入先において、勤務経験がある
- 会社の主幹事証券において、勤務経験がある
- 会社の主要取引先である組織において、勤務経験がある
- 会社の監査法人において勤務経験がある
- コンサルティングや顧問契約などの重要な取引関係が現在ある、もしくは過去にあった
- 親戚が会社に勤務している
- 会社に勤務経験がある
会社と何かしらの関係がある(あった)場合は、独立でないと判断され、「反対」とされてしまいます。
補足文で弁明する
なお、上記のような状態であっても、補足の文章を追加することで、「賛成」としてもらえる場合もあります。
簡単に言えば、 会社と関係はある(あった)けれども、軽微であるという内容の説明を加えます。
たとえば、こんな感じの内容です。
〇〇氏は、過去、当社の取引先である株式会社〇〇〇〇の業務執行者でしたが、業務執行者を離れて〇年以上経過しております。また、同氏は同社を平成〇〇年〇〇月〇〇日付で退社し、〇年以上経過しており、独立性に問題ないものと判断しております。
あるいは
〇〇氏は、現在、株式会社〇〇〇〇の取締役であります。同社と当社との間に取引があり、取引額は平成〇〇年度の売上高に対して〇%未満であります。過去および現在の状況から、独立性に問題ないものと判断しております。
反対される「経営トップ」
また、社長などの経営トップにも「反対」の判断をする場合があります。
- 資本生産性が低く(過去5期平均の自己資本利益率(ROE)が5%を下回り)かつ改善傾向にない場合、経営トップである取締役
- 株主総会後の取締役会に最低2名の社外取締役がいない場合、経営トップである取締役
- 親会社や支配株主を持つ会社において、株主総会後の取締役会にISSの独立性基準を満たす社外取締役が最低2名いない場合、経営トップである取締役
- 前会計年度における取締役会の出席率が75%未満の社外取締役
- 少数株主にとって望ましいと判断される株主提案が過半数の支持を得たにもかかわらず、その提案内容を実行しない、あるいは類似の内容を翌年の株主総会で会社側提案として提案しない場合、経営トッ プである取締役
上記のような場合、経営トップとしてふさわしくないという判定をされてしまいます。