ストックオプション、株式の新規公開でいちどに大きな利益を得た人を見て、「お金って怖いなあ」と感じたことが何度もありました。お金は人を狂わせます
by 北尾 吉孝
日本でも、いろいろな株式報酬制度がでてきました。
あらためて、どの制度がよいのかを考察。
まずは、どのような制度があるのかを列挙。なお、これ以外にもあると思います。
持株会
日本では歴史のある株式報酬制度。
どのぐらいの企業が導入しているのかという統計的なものは調べていませんが、社員向けの財形の一環で導入されている企業は多いと思います。
従業員の給与から天引きされ、それが株式購入に充てられるます。会社によっては拠出額に会社補助を上乗せする制度も。
株式を積み立ている間は、持株会名義になっていて、単元株にならなければ、自分名義の株として引き出すことができません。その間は、株主総会での議決権もなし。配当は保有分もらえ、再投資される(はず)。
積み立てに伴い、株式マーケットで定期的な買い需要が生まれ、また安定株主として存在するので、会社側にもメリットがあると思います。
ストックオプション
2000年ごろから広まった制度。
アメリカのIT企業等で導入され、このストックオプション制度を利用して、億万長者になったニュース等で、「ストックオプション」という名称は有名かもしれません。
ストックオプションは別名「新株予約権」で、ある価格(行使価格)で株式を購入できる権利(これが「オプション」)が付与され、行使価格と株価の差が利益となります。
会社や職位、職務等によっては、「会社の業績が●%以上向上したら行使可能」といった行使条件が付けられる場合があります。当然ながら、その条件を達しなければ、株式を取得できません。
オプションの行使の際、行使価額分を払う必要があります。また、ストックオプションの発行にあたり、登記する必要があり、登記費用が会社で発生します。
ストックオプションを行使すると、新たな株式の発行となり、いわゆる希薄化(ダイリューション(Dilution))が発生します。その希薄率が大きいと、大口の投資家からは嫌がられます。
株式交付信託
ここ5年ほど始まった制度。
従業員向けは「ESOP信託」、役員向けは「BIP信託」という呼ばれます。
対象となる社員(あるいは役員)には、業績ポイントが付与され、一定数貯まると株式と交換することができます。
従業員の費用負担はゼロ。ただし、信託銀行を活用するため、会社側での信託銀行への管理費用が発生します。
従業員の金銭負担がない点を除けば、基本的には持株会と似たようなもの。
譲渡制限付株式
ここ2-3年で制度を導入した会社が増えています。
賞与的なものを、金銭ではなく株式で付与することになります。
付与されると、その時点から株主となり、配当金の受け取りや株主総会での議決権の行使などを行うことができます。
「譲渡制限」という名が付いているように、一定期間や条件などを満たさないと、「譲渡制限」の解除が行われず、株式を売却することができません。またされらの条件を満たさず、「譲渡制限」が解除されなかった場合、付与された株式を会社が無償で回収することができます。
どの株式報酬制度がいいのか?
なお、ここでは、会社側ではなく、社員から見た場合で評価しています。
持株会 | ◯ |
社員ならば基本的に参加できる。 積立預金のような感じで、自社の株が貯まっていく感じで、コツコツ貯めるのが日本人的で合っている?拠出金に対する会社補助があれば、低金利時代にはおトクな制度。 |
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ストックオプション | △ |
ちょっとハイリスク。 社員全員に付与されるわけではない。 企業の誕生期に付与されたり、業績の急成長が著しいIT企業等ならば、株価の伸びもあり、うまくいけば高収益を得られる可能性も。一方で、もらい損の可能性も。 オプションを行使して株式するにあたり、行使費用が高額になることも。 |
株式交付信託 | ? |
制度が始まって間もないため未知数。 一定数ポイントを貯めなければ株として付与されないので、株式を保有している感は薄い。 |
譲渡制限付株式 | ? |
制度が始まって間もないため未知数。 譲渡制限解除されないと、株式が会社に無償取得されるのが要注意。 譲渡制限解除の条件次第か。 |
結局「持株会」という無難な結果。
基本的には、株価下落の痛みも株価上昇の喜びも分け合う株式、成功だけを分けあうストックオプションという違いがまずあります。
持株会は積み立て分を保有できますが、最近現れた「譲渡制限付株式」は、ストックオプションのように条件を満たさない場合(譲渡制限が解除されない場合)は没収できてしまう点が要注意でしょう。
なお、私見的な内容なので、実際にはいろいろな点をご検討ください。