新任取締役の経営手帳

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24時間働けますか?「社員」と「取締役」の違い

「取締役」は何をする人?知らないと危険な「取締役」の責務。

 

「社員」と「取締役」の違い

 

初めて「取締役」という職業に就いたのは2006年頃。今から10年も前。

それ以前は、普通に「社員」でした。新卒で会社に入り、主任、課長代理や課長などの職位を経験し、それなりに大きな会社であったので、職位は、ピラミッドのような階層構造で、順に上に登っていくという印象がありました。

大きな会社の「社員」「従業員」としての数年間を経験したので、会社における「社員」とは、どういうものかというのは、感覚的には理解しているはずです。

 

その後、別の会社に転職して、しばらくしてから、その会社の「取締役」に就任しました。

 

 

「取締役」は何をする人?

就任当初、実は「取締役」というが、どういうものか、よくわかっていませんでした。大きな会社で「取締役」といえば、雲の上のような存在。普段、どのような業務を行っているのかなどというのは、よく知りません。

 

そのときは、漫画「課長 島耕作」で、主人公「島耕作」が「取締役」に就任した以降の内容を読みながら、「取締役」とはこんなものなのか、と想像していました。

 

 

漫画「課長 島耕作」で「取締役」について学ぶ

漫画「課長 島耕作」では、「島耕作」が、出世競争の末、「取締役」となりました。(その後、「常務」「専務」を経て、「社長」、そして「会長」となるのは、ご存知のとおりです。)

漫画を読むと、当初、「取締役」というのは、「部長」「係長」といった「職位」のようなものかと思っていました

 

 

「取締役=職位」ではない

しかし、「取締役=職位」というのは、実はかなり違いました。

「職位」ではなく、根本的に立場が違い、

「取締役」は「従業員」ではない

ということです。

 「従業員」は会社に雇われているわけですが、「取締役」は会社から「委任」されています。

 

これは、こんな感じで現れます。たとえば、

  • 労働時間がない
  • クビにできない
  • 雇用保険がない
  • 権限がある分、責任も持つ
  • 決めることが仕事

といった点です。

 

 

労働時間のない「取締役」

「取締役」は、「雇用者」ではないので、労働時間がきまっていません。

普通の従業員の場合は、決まった勤務時間、残業時間分の残業代などの決まりがありますが、「取締役」の場合は、そのようなものはありません。

一日8時間働こうが、あるいは1分だけ働こうが、極論を言えば、24時間働くことも、出社をしなくとも、法律上は問題はありません。

ただ、現実問題として、社長や取締役会などから、担当する業務を与えられ、それが出社せずとも、果たして業務が回るのか、という点があります。

その業務に、さまざまなスタッフが関わっている場合、現場に出ないと、回らないことも多いはずです。

法律上は自由に働いてもいいわけですが、実際は、社内の社員と同じ勤務時間にせざるを得ないというのが現状です。

 

 

労働者ではない「取締役」

従業員には、「クビ」「解雇」ということがあります。「取締役」には、それがありません。

取締役を辞めさせることはできるが、株主総会を開き、解任手続きをとるので、かなり手間がかかります。

 「取締役」は、雇用者ではなく、雇用する側になります。

そのため、雇用保険はなく、雇用保険を納める必要もなくなります。そのため、「取締役」は、失業しても、失業保険が出ないということです。

また、取締役は、雇用保険だけでなく、労災保険もありません。仕事中に、事故が起きても、何も公的な支援はありません。(自ら、私的保険に入り、備えるしかありません。)

 

 

取締役は「決めること」が仕事

「取締役」の会社の経営陣の一員で、基本的な仕事は、「決定」することです。(他の取締役の「監督」という、会社法上に定められている業務もあります。)

会社の行動を、「行うのか」「行わないのか」、それを判断するのが、「取締役」のしごとです。

といつつ、「取締役」も、従業員と一緒に、実作業を行うことが多いのが、日本の会社の取締役の姿です。

 

 

責任が重い「取締役」

また、取締役は、「責任」という点で、会社法423条の中で「役員等の株式会社に対する損害賠償責任」として、明記されています。

もし、取締役としての任務を怠り、会社に損害が発生した場合、その損害補償をしなければいけないのです。

このような損害補償の可能性は、「取締役」を行う個人から見れば、かなりリスクとなりますので、思い切った経営判断を取ることに躊躇してしまう可能性もあります。

従業員でも、過失で損害が発生した場合は、会社から損害賠償請求を受けることもあります。が、取締役のそれとは、金額のレベルが違うことが多いです。 

そのため、保険会社と「会社役員賠償責任保険」を結び、金銭的リスクを抑えることがあります。また、社外取締役の場合は、会社と「責任限定契約」を結び、補償するのはいくらまでと決めてしまうこともあります。

 

 

万が一の「役員保険」 

世の中、うまくできたもので、そのような取締役の損害賠償をカバーする保険というのものが、用意されています。

以前、とある会社の役員が、約20億円ぐらいの損害賠償を、会社側に支払わないといけない、という事案が起きたが、役員保険でそれがカバーしたらしい、という話を聞いたことがあります。

 

このように、「取締役」は、「責任」が重いわけですが、その分経営の意思決定をおこなったり、会社の業務や方向性を決める「権限」があるわけです。

 



日本人は、平社員から係長、課長、部長、取締役と位が上がっていき、地位が高くなればなるほど働かなくなるとよく言われる。
by 盛田 昭夫

 


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