「<WeCrashed ~スタートアップ狂騒曲~>第1話 This Is Where It Begins 全ての始まり」から、ベンチャー経営に生かせる経営のヒントとは。
- <第1話 This Is Where It Begins 全ての始まり >の概要
- 教訓: 他人の褌で相撲を取る
- 教訓: ダイヤの原石を見つける
- 教訓: いい物が売れるわけではない、セールス力が重要
- 教訓: まずは小さく実践して 夢物語を信じさせる
- <WeCrashed ~スタートアップ狂騒曲~>とは
2022年に、Apple TVで<WeCrashed~スタートアップ狂騒曲~>というドラマが公開されました。<WeWork>の創業者であるアダム・ニューマンの物語で、最近では、出資者のソフトバンクとのトラブルが話題となりました。
<第1話 This Is Where It Begins 全ての始まり >の概要
第1話は、WeWork創業前のアダム・ニューマンが、起業家としていくつかのビジネスプランを、いろいろなところに持ち込んでいるものの、ほとんど断られ、なかなか芽が出ない時期の話です。
その時期に、建築家ミゲルと、後に妻となるレベッカと、たまたま知り合い、WeWorkの原型となる、ビジネスアイデアを思いつきます。
教訓: 他人の褌で相撲を取る
アダム・ニューマンが、シェアオフィスの事業計画書を、ミゲルに翌朝までに作らせるシーンがあります。アダム・ニューマンは朝までスヤスヤと眠りながら、ミゲルは頑張って、徹夜で完成させます。そして翌朝、アダム・ニューマンは、さも自分が作った事業計画書かのように、投資家の前でプレゼンします。そんな内容が<第1話 This Is Where It Begins 全ての始まり >で描かれています。
このように、ビジネスアイデアは、自分だけがつくるだけでなく、まわりにある他の人のビジネスアイデアを自分のものにすることも、時には必要です。
まさに「他人の褌で相撲を取る」というコトワザ通り。
歴史を振り返れば、そういう事例はけっこうあります。
- スティーブ・ウォズニアックにPCを作らせたスティーブ・ジョブズ
- 他者のソフトを買い取り、MS-DOSとして発売したマイクロソフト
- スターバックス創業者から権利を買い取り、店舗ビジネスを始めたハワード・シュルツ
- マクドナルドの権利を創業者から買い取り、チェーンビジネスを始めたレイ・クロック
教訓: ダイヤの原石を見つける
上のどの事例でも、他人のダイヤの原石を磨いた結果、その後のビジネスの急伸につながりました。
もっとも、ダイヤの原石を最初に持っていた当事者は、それを磨けば、ダイヤになることに気づかなかったというパターンが多いように思います。
たとえば、2番目のマイクロソフトの事例なんかは、まだWindowsがない、マイクロソフト創業時代の話です。元のソフトを作った当事者から、マイクロソフトがソフトを買い取る際、マイクロソフトがそれをIBMに自社OSとして売るということは言わずに、売買交渉をして、のちに当事者がそれを知ったときに、ソフトの売却価格をもっと高くできたのでは?と後悔したとか。
また、4番目のマクドナルドの事例も、創業者であるマクドナルド兄弟が、今で言うファーストフード方式のシステム化を実現化したお店を作ったものの、フランチャイズによる積極的な出店には及び腰で、当時ミルクセーキ・マシンのセールスマンだったレイ・クロックが、その状況をもったいないと思い、マクドナルド兄弟から権利を買いとり、フランチャイズによる多店舗ビジネスへと発達させました。
ダイヤの原石は自分で作るだけでなく、まわりを見て、ダイヤの原石が落ちていないかをよく調べてみることが重要ということです。
教訓: いい物が売れるわけではない、セールス力が重要
<WeCrashed>を見ていて、印象的なのが、アダム・ニューマンの巧みなセールス話術。
たとえば、<第1話 This Is Where It Begins 全ての始まり >の冒頭のシーン。同じアポートに住む隣人を、自分で飲まないかと誘い、最初は断っていた隣人が、いつのまにか部屋に来ることになりますが、アダム・ニューマンの部屋には、食べ物や飲み物がなく、結局、その場の雰囲気に言いくるめられて隣人が用意することになります
先述のWeWork共同創業者であるミゲルが、徹夜で事業計画書を書くことになったのも、自分の役目は営業で、事業計画書を用意するのは設計デザイナーであるミゲルの役目だとアダム・ニューマンの言葉とその場の勢いでミゲルが渋々納得してしまうという流れからです。
それら以外にも、アダム・ニューマンは、口だけで巧みな交渉で、自分に好都合な条件を引き出す、そんな印象のシーンがいくつか描かれています。映画ストーリーなので、どこまでが本当かはわかりませんが。
アダム・ニューマンは、イスラエルからの移民で、流暢な英語ではなく、かといって詐欺師のような巧妙な話術というわけではないのですが、言葉の勢いと人をその気にさせる話し方が、特徴なのかと思います。日本で言えば、ジャパネットたかたの高田社長のような感じです。
後年、ソフトバンクの孫正義社長が、アダム・ニューマンに惚れ込み、多額の投資を行います。結果的にそれは大失敗だったことになります。あきらかに事前の調査等を行えば、回避できた投資案件ですが、それだけ人を魅了させる話術をもっているのでしょう。
教訓: まずは小さく実践して 夢物語を信じさせる
<WeWork>自体のビジネスは、基本的にはシェアオフィス・サービスで、ビルオーナーからフロアを借りて、それを細かく分けて、スモールビジネス事業者に貸すという、単純なサブリース不動産業です。
アダム・ニューマンが、創業前に<WeWork>のビジネスプランをいろいろなところで説明しますが、聞いた人からは「それってシェアオフィスでしょ。シェアオフィスに夢はない」と言われてしまいます。
アダム・ニューマンは、「シェアオフィスのビジネスを通じて、社会や地球にポジティブな価値創造体になる」というようなことを、お得意のトークで熱く論じますが、聞いている方は夢物語のような感じにしか、受け取られません。
なんとか<WeWork>の1号店をオープンさせ、実際にできたものは、シェアオフィスとは少し雰囲気が違ったものでした。そして、ダメだと言われた人々に、それを見学させることで、なんとなく、<WeWork>が目指すのはこういうことなのか、と信じ始めた感じです。
こういうのは、創業前の、ビジネスプラン段階では、よくありえることです。「そんなの、できないでしょ」と言われ、断れ続けられることが多いものです。まずは、デモでもβ版でもいいので、小さく走らせてしまうことです。それで、社会や顧客からの反応を何かしら引き出し、それを次の行動のステップにします。
<WeCrashed ~スタートアップ狂騒曲~>とは
WeCrashedは、実話をベースにしたアメリカのオンラインドラマ。シリーズの主演はジャレッド・レトとアン・ハサウェイ。 2022年3月18日にAppleTV+で初公開されました。