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欧州規制MiFIDIIで「証券アナリスト」が廃業?

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欧州規制MiFIDIIの「証券アナリスト」への影響について書いてみました。

 

欧州規制MiFIDIIで「証券アナリスト」が廃業?

 

 

最近気になった記事に、こんなものがあります。

toyokeizai.net

 

「証券アナリスト」に大きな影響が起きそうです。

 

 

証券アナリストとは

金融業界に「証券アナリスト」という職業があります。

名前のとおり、株式上場企業などの株価を分析して、アナリストレポートなどを書くのが仕事です。

 

証券アナリスト(しょうけんアナリスト、英: Securities analyst)とは、市場を分析し調査をする者である。財務分析家、リサーチアナリスト、株式アナリスト、投資アナリストともいう。

日本においては公的職能団体として、日本証券アナリスト協会がある。日本証券アナリスト協会は、証券アナリストを公的に認定するための試験制度を実施している。

 証券会社や資産運用会社などの金融機関の中の職業です。あるいは、独立で行なっている証券アナリストもいらっしゃいます。

 

 

合格率50%の証券アナリスト資格試験

日本の場合、日本証券アナリスト協会が主宰している「証券アナリスト(CMA)」という資格試験があり、試験に合格し、所定の登録を行うと「日本証券アナリスト協会検定会員」となります。

私も、アナリストではないものの、この資格は持っています。

 

証券アナリスト資格試験は、通信教育講座を受講後、1次試験で「証券分析とポートフォリオマネジメント」「経済」「財務分析」の3科目を受験し、3科目合格したのうちに、次の通信教育講座を受講し、2次試験を受験という、2段階構成になっています。

2次試験に合格し、3年以上の実務経験があると、「日本証券アナリスト協会検定会員」資格が認定されます。

 

直近の合格率を見ると、以下のような状況になっています

 

証券アナリスト1次試験
時期 受験者数 合格者数 合格率
2014年春 6,310 3,106 49.2%
2014年秋 4,671 2,329 49.9%
2015年春 6,834 3,413 49.9%
2015年秋 4,651 2,308 49.6%
2016年春 7,066 3,743 53.0%
2016年秋 5,000 2,621 52.4%

 

証券アナリスト2次試験
時期 受験者数 合格者数 合格率
2014年 2,376 1,175 49.5%
2015年 2,339 1,127 48.2%
2016年 2,410 1,159 48.1%

 

1次試験・2次試験での合格率は、おおよそ50%で推移しています。 

 

なお、日本の場合、「証券アナリスト」業務は、弁護士や税理士のように、「証券アナリスト(CMA)」を持っていないと、業務ができないということはありません。

「外務員(旧:証券外務員)」資格という、証券会社の社員が、外務員として営業活動が行う上で必要な資格があれば、証券会社での銘柄調査レポートなどを作成できます。

証券会社に属することがなければ、資格無しで、「証券アナリスト」業務は行えます。

 

本題に戻り、そんな「証券アナリスト」という仕事が、淘汰されるという話です。

 

 

MiFIDII(金融商品市場指令)が発令

「証券アナリスト」という仕事が淘汰されるのは、欧州において、「第 2 次金融商品市場指令 MiFIDII (ミフィッド2)」が発令されたことによる影響です。

「金融商品市場指令 = Markets in Financial Instruments Directive」というのは、簡単に言えば、EU域内における証券市場及び投資サービスを規定する規制です。日本の「金融商品取引法」に近いものとされています。

 

新しい規制内容が2018年1月から始まります。

その規制内容の中に

2018年1月導入予定の第二次金融商品市場指令(MiFID II)において、欧州連合(EU)を含む欧州経済領域(EEA)の運用会社が支払うコミッションの執行手数料とリサーチ手数料の分別管理を義務付けることとなった。

 といったものが含まれました。

 

詳しくは、専門家による解説記事などをご参照ください。

MiFID II を機とした運用会社におけるリサーチリソース配分の見直し|2016年11月号|金融ITフォーカス|刊行物|NRI Financial Solutions

 

今までは、株式などの有価証券を取り扱う証券会社の中にアナリストがいて、彼らが、アナリストレポートを書き、それを運用会社の担当者が読み、有価証券を購入するかどうかを検討して、その証券会社に注文を出して、証券会社は売買手数料を得ています。このアナリストレポートの「投資リサーチ費用」というのも、売買手数料に内包(上乗せ)されていることがあり、不明瞭な状態でした。

 

その状態を、MiFIDIIでは、

証券会社は、仲介手数料を売買執行部分とリサーチ部分に分けることを宣言し、運用会社は「手数料アンバンドリング(分離開示)合意(Commission Sharing Agreement)」などの取決めを確立することが求められる

ということになりました。

 

 

「証券アナリスト」が廃業というよりも独立化が進む?

上規制は、株式などを扱う証券会社の中にいる証券アナリストの場合、今までのような、暗黙の手数料ということが難しくなるということになります。

逆に、「証券アナリスト」業を行なっている専門会社の場合は、料金体系が明らかなので、この影響は少ないように思います。 

結果的には、よい調査レポートを書ける「証券アナリスト」は残り、それ以外は居づらくなる環境となりそうです。

 

 

「証券アナリスト」の存在価値が問われる

日本の場合、この欧州規制MiFIDIIがある前から、「証券アナリスト」の淘汰が始まっているように感じます。

インターネットが普及する前は、投資先企業の情報を調べるのは、今のように簡単ではなく、また限られた内容しか得ることができませんでした。そういう時代において、「証券アナリスト」が書く調査レポートというのは、投資家、とくに一般個人投資家においては、貴重な判断材料でした。

いわば「証券アナリスト」は「情報の非対称性」をつかった職業とも言えました。昔は、会社が発表した内容を、そのまま転記しような調査レポートというものがよくありました。(今も、たまに見かけます。。。)

しかし、インターネットが普及し、企業が公開する情報は、一般の人とアナリストであまり差異がない状態となっています。以前あったような「情報の非対称性」がなくなりつつあります。

ここ10-20年内で、リーマンショックなどの金融不況で、日本の「証券アナリスト」人口は、証券会社にいた従来のアナリストは少なくなり、資産運用会社の中にいるアナリストや独立系のアナリストへの移行が進んでいるように感じます。

 

 

 



アナリストとて引退すればいち個人投資家になるわけだが、結局考え過ぎて、売りも買いも決断できないタイプが多い。
by 豊島 逸夫



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