新任取締役の経営手帳

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取締役会で何が行われているのか

取締役会のイメージと実態。

 

取締役会で何が行われているのか

 

 

取締役会の一般的なイメージ

企業モノの小説や映画などに登場してくる取締役などの重役というのは、会社の重要なことを会議室で議論しているようなイメージで描かれることが多いです。

とくに取締役会のシーンがあると、

  • 「現社長を退任させて、新しい社長が誕生する」
  • 「新しいビジネスを始めるかどうかを決断する」
  • 「企業買収を決める」

などが話し合われ、ドラマティクな展開に進むことがあります。

 

 

 

実際の取締役会

しかし、実際の会社では、そういう取締役たちが集う会議室では、どういうことが行われているのでしょうか?

会社法で定められている責務、つまり法的な義務として、取締役会を3ヶ月に1度開催する必要があります。

この取締役会では、会社の経営の状況の確認と、各種決議事項を執り行います。

 

 

会社法で規定されている「取締役会決議事項」

取締役会での決議事項として、会社法では、

  • 代表取締役の選定・解職(362条2項)
  • 業務を執行する取締役を選定(363条1項2号)
  • 重要な財産の処分及び譲受け(362条4項1号)
  • 多額の借財(362条4項2号)
  • 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任(362条4項3号)
  • 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止(362条4項4号)
  • 募集社債発行の決定(362条4項5号)
  • 業務の適正を確保するための体制の整備(362条4項6号)
  • 取締役の任務懈怠責任の免除の承認(362条4項7号)
  • 譲渡制限株式の譲渡の承認及び指定買取人の指定(139条1項、140条5項)
  • 自己株式の取得価格等の決定(157条)
  • 子会社からの自己株式の取得の決定(163条)
  • 取得条項付株式の取得の決定(168条1項、169条2項)
  • 自己株式の消却(178条)
  • 株式分割(183条2項)
  • 株式無償割当てに関する事項の決定(186条)
  • 単元株式数についての定款変更(195条1項)
  • 所在不明株主の株式の競売もしくは売却または買取(197条)
  • 公開会社における新株発行とその内容の決定(201条、202条)
  • 譲渡制限株式の割当てを受ける者の決定(204条)
  • 一株に満たない端数の買取り(234条5項)
  • 公開会社における新株予約権の発行とその内容の決定(240条、241条)
  • 譲渡制限株式を目的とする募集新株予約権または譲渡制限新株予約権の割当てを受ける者の決定(243条)
  • 譲渡制限新株予約権の譲渡の承認(265条1項)
  • 取得条項付新株予約権の取得の決定(273条1項、274条2項)
  • 新株予約権の消却(276条)
  • 新株予約権無償割当てに関する事項の決定(278条)
  • 株主総会の招集(298条4項)
  • 訴訟における代表者の選任(353条、364条)
  • 取締役による競業取引および利益相反取引の承認(356条、365条1項)
  • 取締役会を招集する取締役の決定(366条1項ただし書)
  • 特別取締役の設置(373条1項)
  • 計算書類の承認(436条3項)
  • 臨時計算書類の承認(441条3項)
  • 連結計算書類の承認(444条5項)
  • 一定の場合における資本金・準備金の減少(447条3項、448条3項)
  • 中間配当の決定(454条5項)

と定められています。

会社によっては、上記の事項を、取締役会以外での決議とする機関設計を行なうところもあります。

 

 

会社の意思決定をする「取締役会」

「取締役会で決めたこと」は、「会社としての意思決定」となります。

 

なお、会社の最高決定機関としては「株主総会」があります。

しかし、意思決定が必要となるたびに株主を招集して「株主総会」を開催することは実務上難儀です。しかも、意思決定のスピードが鈍化してしまいます。ベンチャーなどで、株主が数名しかおらず、すぐに株主を集められる状況ならば、可能でしょうが。

そこで、会社の意思決定を、株主が取締役・取締役会へ委任することになります。

 

また同様に、意思決定を「取締役会」で決めるとなると、3ヶ月に1回(あるいは毎月1回程度)の開催では、業務のスピードが遅くなる、ということがあります。たとえば、会社の了解をとりながら仕事を進める必要がある場合、毎月1回の頻度ですと、次の取締役会の開催を待つ間に、商機を失うということもあるでしょう。

 

そのため、一般的には、会社内での決裁の権限として、

取締役会 > 社内重役だけの経営会議 > 代表取締役 > 取締役 > 部長 > 課長 > ・・・

というような順位をさだけ、金額などの重要度に応じて決定することが多くなります。

 

このように、業務における意思決定を現場レベルで決裁するようになると、取締役会で実際に議論する内容というのは、 手続き的な内容ぐらいにしか残りません。

上記のように、会社法で定められている内容はありますが、社債の発行、支店の開設などを毎回の取締役会で決議するということはないので、「会社の経営の状況の確認」ぐらいしかやることがありません。簡単に言えば、月次決算などの経営状況の確認がメインということが多いのではないでしょうか。

 

 

 

取締役会の招集手続きの「瑕疵」という問題

企業モノの小説や映画では、たとえば、株主総会や取締役会などがこっそりと行われて、重要な内容が決められていたということがあります。

しかし、取締役会は開催の3日前までに、株主総会は2週間前までに、対象者に開催の通知を出さないといけません。(ただし、同意があれば、この期間の短縮して、すぐに開催ということも可能です。)この手続きが行なっていないと、開催して決定しても、無効とされてしまいます。

なお、たとえば、ベンチャーなどの資金調達が無効となる可能性もありますので、株式発行などの際には、取締役会・株主総会の招集日付・開催日付を気をつけないといけません。

昔、「厄介な役会(やっかい・な・やっかい)」と言っていました。

 

 



取締役会では、50~75%ぐらいの時間を割いて戦略について議論しています。残りはその実行、業績、ポートフォリオなどです。
by エレン・クルマン

 

 


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