会計監査人の監査報告書が書式変更され、監査役(監査等委員)の責任が明記されるようになりました。
監査報告書の書式変更
2020年より、会計監査人である監査法人が発行する監査報告書の書式が変更されています。
まずは、監査法人名の下に「東京事務所」が明記されたり、などの細かい書式変更。内容は大きく変わらず、字句・文言が変更されているものならば、大きな問題点はないのですが、監査役や監査等委員にとって重要な変更点もあります。
監査役(監査等委員)の責任が明記
それが以下の内容です。
連結財務諸表に対する経営者並びに監査役及び監査役会の責任
経営者の責任は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して連結財務諸表を作成し適正に表示することにある。これには、不正又は誤謬による重要な虚偽表示のない連結財務諸表を作成し適正に表示するために経営者が必要と判断した内部統制を整備及び運用することが含まれる。
連結財務諸表を作成するに当たり、経営者は、継続企業の前提に基づき連結財務諸表を作成することが適切であるかどうかを評価し、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて継続企業に関する事項を開示する必要がある場合には当該事項を開示する責任がある。
監査役及び監査役会の責任は、財務報告プロセスの整備及び運用における取締役の職務の執行を監視することにある。
従来は下のような内容でした。
連結財務諸表に対する経営者の責任
経営者の責任は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して連結財務諸表を作成し適正に表示することにある。これには、不正又は誤謬による重要な虚偽表示のない連結財務諸表を作成し適正に表示するために経営者が必要と判断した内部統制を整備及び運用することが含まれる。
会社が表示する財務諸表に関して、従来は社長である経営者の責任だけを監査報告書に明記されていました。それが、監査役(監査等委員)にも責任があることが明記されるようになりました。
監査法人の責任を分担?
法律上は、従来から監査役(監査等委員)に課されている責務の一つなので、新たな責任というわけではありません。経営者が、売上等の財務数値を作り、監査役(監査等委員)はその作り方に問題はないのかをチェックするという構図です。
ここ数年、大きな会社等で会計不祥事の事件が起こり、その会社の会計をチェックした監査法人の責任ばかりが、世間やメディアでフォーカスされています。
しかし、実際のところ、監査役(監査等委員)にも同様の責任があるということを示したいかのようにも感じます。
来年度からは、監査法人の発行する監査報告書に「KAM」と呼ばれる内容が追加されます。
監査報告書の変更が続きますので、変更概要のチェックが重要ですね。