有価証券報告書に記載始まった「株主総利回り」について。

最近の有価証券報告書をみると、今までなかった項目「株主総利回り」が追加されています。
ソフトバンクグループ株式会社の「株主総利回り」
たとえば、ソフトバンクグループ株式会社の第40期(平成31年4月1日 ‐ 令和2年3月31日)有価証券報告書をみると、報告書の最初の方にある「主要な経営指標等の推移」に、
2016年3月 | 2017年3月 | 2018年3月 | 2019年3月 | 2020年3月 | |
---|---|---|---|---|---|
株主総利回り | 77.5 | 113.9 | 115.7 | 156.4 | 112.3 |
比較指標:日経平均株価 | (87.3) | (98.4) | (111.7) | (110.4) | (98.5) |
というように公開されています。
「株主総利回り」とは?
「株主総利回り」というのは、TSR(Total Shareholder Return:トータルシェアホルダーリターン)とも言われるもので、
株式投資により得られた収益(配当とキャピタルゲイン)を投資額(株価)で割った比率をいう。
有価証券報告書に記載する開示府令で規定する計算式では、
と定められています。
株価だけでなく、その期間の配当も含む形となっていて、投資者の投資益を計算したものになります。
株主総利回り < 100 は投資損
上の式を見ればわかるように、
100を基準として、
上回れば投資益があり、
下回れば投資損、
ということになります。
長期投資家が注目する「株主総利回り」
「株主総利回り」は、数年単位での株式の保有を特徴とする長期投資家には、重視するポイントと言われています。
「株主総利回り」の要素としては
- 株価の年度終値
- 配当
の2つしかありませんが、
- 株価の年度終値:利益成長に伴う株価の伸び、自己株式の取得による株価の向上
- 配当:増益による配当原資の拡大
など、経営陣の努力により「株主総利回り」を伸ばすことができます。
機関投資家の中には、この「株主総利回り」を見て、取締役の賛否を判断するところもあるようです。
注意点
有価証券報告書に記載されている株主総利回りは、配当利回りなどのように、その年度の数値は固定化されず、毎年変動します。
これは基準となる5年前の株価が変わるため、毎年計算し直し、変動することになります。