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投資家が幻想する「右肩上がり」神話:東京ディズニーが成長を続けられる理由

投資家は、社会や企業が「右肩上がり」基調に乗っていると安心します。

 

投資家が幻想する「右肩上がり」神話

 

 

日本の上場企業2018年3月期は過去最高益を達成

5月の連休後は、企業の決算発表が集中する時期で、集中日には800-900社の企業が決算発表をしています。

2018年の特徴としては「好業績」。

東証1部上場企業(金融除く)全体の2018年3月期決算は全ての利益が過去最高を更新。

2019年3月期も堅調な世界経済を背景に、売上高や営業利益は引き続き伸びる見込み。

 

 

「前期比増」がマスト

決算発表直後の株価のUP/DOWNの動きをみると、「成長」が前提で、企業価値が形成されていることを改めて実感します。(なお、株価の中には、業績は関係なく、株式売買の需給バランスなどで騰落している企業もあります。)

特に株式上場をしている企業の場合、来期の計画数値というのは「前期比増」でなくてはならないという、暗黙の了解があるように感じます。

仮に「前期比減」という計画数値を発表したら、よほどの理由がないかぎり、その企業の株価は下落してしまいます。

その株価の下落は、利益ベースで見れば、減少した分反映された形なので、ロジカルな反応なのですが、「株価が下がる」ということは、その企業の経営陣にとって見れば、外部の投資家もいますし、自分たちの持ち分の株、社員の持株会など、保有している株式の評価が一瞬で下がることになり、気分がいいものではありません。

そういうやな思いをしないために、結果的に「前期比増」の事業計画というのが必然と出てきて、目の前に人参がぶら下げられた馬のように、がむしゃらに邁進しなくてはいけないような空気感が生まれています。

 

  

「右肩上がり」神話

そのような空気感の中には、「今日よりも明日」「今年よりも来年」には状態はよくなる、「右肩上がり」神話とでも呼ぶような考え方が存在するように感じます。

むしろ「右肩上がり」であると安心するような感じもあります。

  • 会社の業績が伸びる
  • 会社の余裕資金が増える
  • 社員に還元される。給与が増える。
  • 社員の消費活動が活発化
  • 世の中にお金が回る

といった感じで、「右肩上がり」の方が、世の中が明るい感じになります。

しかし、少子高齢化で人口が減少している日本では、全体の消費量が下がり、前年と同じことをしていれば、業績は「右肩下がり」に陥りやすい状態です。

「国内減少分を海外売上で増やす」「新規事業領域を作る」などの戦略でも行わない限り、ドメスティックな企業にとっては、「右肩上がり」がしにくくなります。

 

 

日本制覇してしまう事業戦略

昔、いろいろな企業のIPO時のエクイティー・ストーリー(投資家向けの事業戦略プラン)の作成にたずさわっていたときに、よく登場したのが「日本制覇」プラン。

  1. 今の出店数は●●店舗です。
  2. これを隣のエリアでも展開します
  3. エリアごとにシエアを高め、いわゆる「面」戦略を強化していき、日本一を狙います。

というような感じです。最後に富士山が出てくるのがお決まりでした。

小売や飲食系などの出店形態のビジネスでは、だいたい、このようなロジックで、投資家が喜びました。これらを前提に、どれぐらいの確度があるのかで評価されて、IPO時の株価(企業価値)も決まっていった時代です。

そのときのエクイティー・ストーリーが、そのとおり実現したかどうかは、企業により様々です。。。

 

 

 

東京ディズニーリゾートが成長を続けられる理由

東京ディズニーリゾートを例に考えてみたいと思います。

東京ディズニーリゾートに行かれたことがある方はわかると思いますが、「東京ディズニーランド」と「東京ディズニーシー」の2つの施設は、いつ行っても人がいっぱいで、とくに最近は近隣アジアからの来場者数も多く見られます。

これ以上入場者数が増えると、パーク内のアトラクションでの待ち行列が増え、満足して利用することも難しくなります。実際、東京ディズニーリゾート来場者数は、ここ数年、年間入場数が3,000万人あたりで落ち着いています。

入場者数を、それ以上増やすとなると、新しいパークを開園するしかないわけですが、今のところ、そういう計画はないようです。

 

そうなると、「これ以上業績が成長できないのか?」ということになりますが、利用者数が頭打ちでも、単価を上げることで成長を維持できます。

ある資料によると、東京ディズニーリゾートのチケット代金の推移は、以下のような感じになっています。

ワンデーパスポート大人料金 備考
1983年 3,900円 東京ディズニーランド開園
年間入場者数:993万人
1987年 4,200円  
1989年 4,400円 年間入場者数:1,475万人
1992年 4,800円  
1996年 5,100円  
1997年 5,200円 年間入場者数:1,668万人
2001年 5,500円 東京ディズニーシー開園
年間入場者数:2,204万人
2006年 5,800円  
2011年 6,200円 年間入場者数:2,534万人
2014年 6,400円  
2015年 6,900円  
2016年 7,400円 年間入場者数:3,000万人

 

 

東京ディズニーランドの開園以来、入場者数が年々増加し、業績も比例して伸びていき、また東京ディズニーシーも開園することで入場者数はさらに増えました。

さらに、チケット代金も何年かおきに値上げしていて、1983年に3,900円だったチケット代金は現在7,400円と、約2倍になっています。

 

 

単価と数量

一般的な企業の業績は、販売商品の単価と数量に分解することができます。

売上を増やすには、「単価」を上げるか・「数量」を増やすか、といった点で戦略を考えることができます。

「数量」を増やせる状態ならば、それによる売上拡大が行えますが、「数量」が頭打ちあるいは減少ということならば、「単価」を上げないといけなくなります。

しかし、上の東京ディズニーリゾートのように、一般の企業が商品単価を上げると、消費者離れ・他社の同様商品へ代替ということになり、自社の業績はがた落ちになってしまいます。

チケットを値上げしても「来場したい」という根強い入場者がいることが、東京ディズニーリゾートの強みとも思います。

これ以外で、業績を「右肩上がり」にするには、「新しい事業領域を作る」「新しい顧客を開拓」といった取り組みが必要となります。

 

 

日本全体の「右肩上がり」を狙う「物価上昇2%」

現在、日本では「物価上昇2%」を狙って、国がさまざまな政策を進めています。

少子高齢化で人口が減るけれども、日本全体の「単価」を上げることで、日本全体の業績を「右肩上がり」にするような感じです。

「物価上昇2%」によって、給与などの生活者の所得にも反映されるのであればいいのですが、そういうこともなく、ただ単に「物価が上がった」という状況に陥ってしまうと、消費は冷え込んでしまい、日本全体の業績は停滞してしまいます。

この国家的な「右肩上がり」戦略は、はたしてどうなるのでしょうか? 

 



東京ディズニーランドは縮小する国内市場の中で右肩上がりの成長を実現してきました。
by 加賀見 俊

 

 



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