金融庁への提出書類に記載する「最高財務責任者」欄に「該当なし」とする企業が多い理由について。

上場企業や、非上場企業でも規模の大きな企業は、金融庁に「有価証券報告書」などの書類を定期的に提出しなければいけません。
そんな書類を見ていた時に気になった点があります。
金融庁提出書類の表紙
「住友ベークライト株式会社」を例に見ていきますと、通常の書類「有価証券報告書」は、こんな感じです。

別の書類「内部統制報告書」「確認書」では、こうなっています。

「代表者の役職氏名」までは一緒なのですが、そこから下は、一方は「事務連絡者氏名」で、もう一方は「最高財務責任者の役職氏名」となります。
その「最高財務責任者の役職氏名」が「該当なし」となっているのです。
最初、この状態を、規模の小さな会社で多く見たので、そういう会社は、財務担当役員を置いていないからと思い、規模の大きな企業ではそうではないと思い、いくつかの大きな会社をみると、大きな会社でも「該当なし」とするところはあります。
「最高財務責任者」とは?
この「事務連絡者氏名」には、財務や経理、総務など、この書類を担当している、社内の部署の長が記されることが多いです。
いままで、
「事務連絡者氏名」=「最高財務責任者の役職氏名」
と思っていたのですが、どうも違うようです。
最高財務責任者=代表者に準じるような責任者
金融庁などが公開している解説書をみると、以下のように紹介されています。
(質問)
【最高財務責任者の決定】
内部統制報告書に記載する最高財務責任者は、具体的には、どのような
者が考えられるのか。いわゆるCFOがいる場合には、必ずその者が最高
財務責任者になるのか。また、最高財務責任者を定めるにあたって、取締
役会の決議等何らかの手続は必要となるのか。ーー
(回答)
内部統制報告書に役職氏名を記載する最高財務責任者とは、「会社が、会社内部における役職のいかんにかかわらず、財務報告に関し代表者に準ずる責任を有する者を定めている場合における当該者をいい、単に財務担当している者は、含まない」とされている。
したがって、会社に、既にいわゆるCFOと呼ばれる者がいる場合であっても、会社が会社の組織や職制などを勘案し、別の者が内部統制報告制度に関して、代表者に準じる責任を有する者として適切であると定めている場合には、当該者が「最高財務責任者」となると考えられる。
なお、最高財務責任者は会社が任意に定めればよく、法令上取締役会等の
決議を必要としているものではなく、最高財務責任者についての届出や登記等も求められていない。
「財務担当役員=最高財務責任者」というわけではない
アメリカではCEO、COO、CFOなどの執行役制度が一般的で、経営・事業・財務と機能で切り分けて、その分野では権限を持った各役員が、各自の責任で業務を行います。しかし、日本では、制度の違いで、すべての会社で、そのような制度を導入しているわけではありません。
また、「内部統制報告書」は、アメリカでSOX法をベースに、日本で導入された仕組みです。
アメリカでは、「内部統制報告書」に、その内容について「最高財務責任者」が責任を負う形にし、日本でも同じような仕組みにしましたが、日本とアメリカの制度の違いで、「最高財務責任者」が「該当なし」となってしまうのではないでしょうか。
いっそのこと、この「最高財務責任者」は、有価証券報告書と同じ「事務連絡者」にしてしまえばいいのではないかと思ってしまうのですが、どうなのでしょうか?
CFOは日本でもっと重視されるべきだと思います。
by 朝田照男・丸紅社長