企業にAIが導入すると、どうなるのでしょうか?
- 「AI(人工知能)」ブーム
- 「ビッグデータ」ブームは終焉?
- 「御社にAIを導入されると、どうなりますか?」
- 経営の意思決定をAI化
- AIで取締役会が不要に
- 経営者のラッダイト運動が起きる?
- AIも「幻滅期」になる?
先日、とあるセミナーで、AI事業をおこなっている会社の概況を聞いてきました。これからの社会に、AIがいろいろと導入されそうで、それが大きなビジネスチャンスにもなっています。
「AI(人工知能)」ブーム
今、この「AI」分野は、かなり活発な状況になってきています。
日経新聞などの経済メディアでも、「AI」というキーワードでの記事が、連日のように掲載されていて、ここ1ヶ月ほどの内容をピックアップしてみると、約250件ほどの記事が出てきます
- 鴻海、AI関連に370億円、5年で、郭氏「製造業を刷新」
- フィリップス、医療・健康を二本柱に、「AIで情報基盤」
- プリファード、工場ロボ、AIで自ら学ぶ、日立・ファナックと新会社
- AIシステムで書籍の需要予測、大日本印刷が開発
- グラブが無人タクシー、まずシンガポール、22年めど、ソフトバンクとAI連携
- AIで通話テキスト化、SMBC日興、事務負担を軽減
- 滴滴、北京にAI研究所、配車向けに交通量予測
- 楽天トラベル、9月に全面刷新、AI使いお薦め表示
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- 中小ホテル、AIで応援――省力化の取り組み活発
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- 東大VC、250億円ファンド、自動運転やAIに投資
- アマゾン、米に無人のAIコンビニ、レジなく自動精算
- りそな、AIで商品提案、顧客ごと、きめ細かく、3月に新システム
こうして、記事の件名だけ見ていても、いろいろな業界や企業で、AIを取り入れた新サービスに注力し始めていることが感じられます。
ここで、ふと気になったのが、ちょっと前にブームだった「ビッグデータ」という単語。あれは、一体どこにいったのでしょうか?
「ビッグデータ」ブームは終焉?
その答えがわかりました。
IT専門の調査会社であるガートナーによると、日本におけるITトレンドの状況は、以下のようになっているそうです。
これは、ITトレンドの状況を、黎明期・「過度な期待」のピーク期・幻滅期・啓蒙活動期・生産の安定期というフェイズことにプロットしたものです。
この図をみると、今「ビッグデータ」は「幻滅期」にあるそうです。
「ビッグデータ」の出現時は、「何かすごいことができる」と期待されたものの、使ってみると「こんなものか」と、その期待が高すぎたのか、期待が消化不良になっていて、もったいないので、落としどころを探しているようにも見えます。また、「ビッグデータ」の「安定期」への移行に「10年以上」要すると設定され、他のトレンドと比べて、実用化までかなり遠いように感じます。
「御社にAIを導入されると、どうなりますか?」
AIにどのような可能性があるのかというブレストのような場で、「御社にAIを導入されると、どうなりますか?」ということを聞かれたことがあります。
会社内の事業プロセスの中に、AIを取り入れる余地は、いろいろとあると思います。導入すれば、効率性は向上するかもしれません。
ふと、事業プロセスではなく、経営の意思決定にAIが入った方が効果が大きいのではないか?と思いました。
経営の意思決定をAI化
企業の行動、いわゆる経営の意思決定は、同じ事象でも、企業によって、取る行動というのは違います。会社の特性によって、1+1→2だけではなく、1+1→3、1+1→0と決定する会社もあります。
企業ごとの過去の意思決定事例を、AIに学ばせ、そういう判断特性をAIが備えることができれば、意思決定が迅速化されるのではないかと思いました。
たとえば、
- ソニー式経営のAI
- トヨタ式経営のAI
- ソフトバンク式経営のAI
などといった、会社の特性にあったAIが作れるようにも思います。
そうすると、より迅速な効率的な経営ができるのではないでしょうか?
AIで取締役会が不要に
経営の意思決定をAI化すると、「取締役会」のような機関では、さまざまな議題を検討はする必要はなくなり、AIから出てきた結果を「最終的に決定した」ということだけの、形式上に意思決定を行う場になるでしょう。
今まで、取締役会の開催に長い時間をかけていた会社は、その時間を別のことにあてることができるようになります。
むしろ、人間の取締役がいらなくなるかもしれません。
経営者のラッダイト運動が起きる?
企業の活動を俯瞰してみると、サービスの提供・商品の製造などを行なっているのが現場で、そこでの活動が収益となります。経営者や管理職というのは、「経営管理」という仕事自体は、原則的に、収益には結びつきません。
AIの導入で、経営者や管理職の仕事が置き換わるようになると、自分の仕事がなくなる可能性が高くなりますので、そうな動きを止めようとする経営者たちが現れるかもしれません。
彼らは、AIの会社導入を反対し、AIに対する破壊活動などを行うかもしれません。
19世紀のイギリスで、産業革命による機械の出現で、自分たちの仕事が奪われると恐れを感じた労働者が、機械を破壊するという運動がおきました。いわゆる「ラッダイト運動」です。
AIの会社導入を反対は、現代版の「ラッダイト運動」です。
逆に、オーナー系企業の経営者などは、自分の仕事をAIが代わりにやってくれ、自分は他のことができるようになると、喜ぶかもしれません。
AIも「幻滅期」になる?
社会にAIが普及してどうなるのか、これは実際に動かしてみないとわからないことです。
「ビッグデータ」のように、期待だけ高く、使って見たけど、「まあ、こんなものだよね」という風にならないことを祈ります。
競争に勝つには、意思決定のスピードを上げるしかない
by 永守重信