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日本企業の大株主となった「日銀」。上場企業の国営化が始まる?

日本銀行が、日本の大手企業の大株主になりつつあるそうです。

 

日本企業の大株主となった「日銀」。上場企業の国営化が始まる?

 

 

先日、こんな社会現象が紹介されていました。

 

日本の大企業の大株主になりつつある「日本銀行」

アベノミクスの一環(だったような)で、国の中央銀行が、本来の守備範囲を超えて、国債や株式にも手を出してしまうという荒技で、金融マーケットへの刺激を与えています。

そして、日本銀行・黒田総裁により進められている「日銀のETF買い入れ」。

当初は、年間5000億円弱だった年間購入枠が、今では年間6兆円ものETFを買っているそうです。

 

ちなみにETFとは、

ETFとは証券取引所に上場し、株価指数などに代表される指標への連動を目指す投資信託です。

正式名称は「Exchange Traded Funds」で、頭文字をとってETFと呼ばれています。

たとえば、日経平均を買いたいと思っても225銘柄を一銘柄ずつ買うのも大変ですし、買ったとしても日経平均の構成銘柄それぞれの日経平均に対する構成率が違いますので、かなりの手間とお金がかかります。そこで、日経平均とほぼ同じ値動きをするようなETFを買いつけることで、実質的に日経平均を買うと似た効果を持つこととなります。

 

 

ユニクロの株式を15%も持つ「日本銀行」

報道によれば、ETFの買い入れが進み、現在では、株主比率において日銀のウェイトが大きくなっている企業も現れているとか。

 

ニッセイ基礎研究所の試算では、日銀が10%以上の株式を実質的に保有している企業は14社に上ります。(2017年3月末時点)

このうち、半導体検査装置メーカーのアドバンテストでは16.8%。
ユニクロを展開するファーストリテイリングでは15.3%に上るとしています。

 

気がついたら、日銀が大株主という、すごい事態に発展しています。

ただ、今のスキームでは、日本銀行が株券を直接持つわけではなく、ETFを通じた間接保有なので、当該企業の株主名簿にでたり、株主の権利を行使したりということはないでしょうが。一種の「国有化」のように見えてしまいます。

 

 

日本の株式市場には「日本銀行」の存在感が頼もしい?

以前、個人的に調べてみたことですが、日本の証券取引所は、海外のニューヨーク証券取引所などと比べて、「プレイヤーが少ない」という構造的な問題を抱えていて、市場全体の規模が増えにくい、という状態です。

例えると、市場規模は、水風船のようなもので、水をたくさん入れると風船が大きく膨らむわけで、その水にあたるのが「株式を買うお金」です。「株式を買うお金」が流入すれば、市場規模が膨らみ、企業の株価も上がりやすくなるわけです。

そういう市場の特性があるなか、日本の市場は、諸外国のと比べると、国外の投資家からのお金が入りにくいという点があります。いわば、内需で、市場規模を増やさないといけないわけです。

そういう状況の中で、ETFという形ではありますが、安定的に株式を購入する日本銀行の存在というのは、日本の株式マーケットにとって刺激剤になっているのだと思います。

別の言い方をすれば、日本銀行が株式マーケットを買い支えている、いわゆる「官製相場」ということになります。

 

 

日本銀行のETF買い入れのインパクト

日本銀行の年間買入額6兆円( = 600,000百万円)として、

東京証券取引所(一部)の年間の売買高は「643,205,780百万円」(2016年度)。これから、日銀の売買が占める割合を計算すると、

 

600,000百万円 ÷ 643,205,780百万円

= 0.09%

思っていたよりも少ない。。。

全体からみれば、
「600,000百万円 ÷ 643,205,780百万円 = 0.09%」という比率は、量的な刺激というよりも、市場参加者への精神的な刺激になっているのかもしれません。セーフティーネットのような感じでしょうか。

 

 

 

「日本銀行」の株を買えば、「間接的に」企業の主要株主になれる?

ここで、ふと思ったのは「日本銀行」も株式を上場しています。

 

証券コード:8301

上場市場:東証ジャスダック

2017年7月末現在、一株39,000円

100株単位なので390万円。

 

日本銀行の株券を大量に買い占めれば、日本企業の大株主に間接的になれるのでは?

そういうのを目論んで、モノ言う株主のような投資家が買いを仕掛けるというのも、ありそうです。

 

しかし、よく調べてみると、これは不可でした。

日本銀行法というものがあり、日本銀行として上場している株券が、普通の会社のとは違うようです。

日本銀行は上場しているが、日本銀行の株券は、通常の株式会社の株券のような経営に参画する権利がなく、いわば出資証券のようなものです。投資信託をたくさん買っても、その投資信託を牛耳ることができないのと似ています。

 

日本銀行の株券を大量に購入・保有しても、日本銀行を牛耳ることはできない。

それは、そうですね。

それが可能になったら、海外の乗っ取りファンドにまっさきに狙われて、日本の金融政策を牛耳られてしまいます。

 

 



日銀は金を世の中に出すのが第一の仕事。
by 磯村 巌

 

 

 


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