企業経営のバランスについて、ふと考えてみたこと。
- 売上規模は違うが、営業利益は同レベル
- 少ない費用で収益を得やすい「収益性」
- 売上高の伸び代の可能性
- 従業員が多いほど、企業の「社会性」は高い
- 「筋肉質」を目指すか、「社会性」を取るか
- 料理人と経営者の矛盾
以下のような企業があります。
事業内容がだいぶ異なるので、単純に比較するのは、ちょっと無理がありますが、数値だけ並べると、こんな感じになります。なお、記載の数値等は丸めています。
A社 | B社 | |
---|---|---|
売上高 | 750億円 | 160億円 |
従業員数 | 約6,000人 | 約100人 |
従業員一人当り売上高 | 12百万円 | 160百万円 |
販管費 | 600億円 | 25億円 |
従業員一人当り販管費 | 10百万円 | 25百万円 |
売上高÷販管費 | 1.25 | 6.4 |
営業利益 | 30億円 | 50億円 |
売上規模は違うが、営業利益は同レベル
A社とB社を比べると、A社の方が、売上高の規模が圧倒的に大きいです。
しかし、その分、販管費も大きくなり、営業利益ベースでは同じような規模感のレベルとなります。
売上が増え、売上金の回収が順調に回れてば、大きな販管費も問題ないですが、社会情勢が不安定化したりし、このバランスが崩れると、資金繰りの問題が急浮上します。
少ない費用で収益を得やすい「収益性」
上記企業を、「従業員一人当りの売上高」「売上高÷販管費」という点でみると、B社の方が、収益性が高く、効率的に収益を得ていることになります。
B社の方が、利益を生みやすく、いわば「筋肉質の企業体質」とも呼べるような形です。
売上高の伸び代の可能性
B社のこの高い収益性をみると、
「従業員を増やせば、その分売上高を増やせるのでは?」
と思ってしまいますが、簡単には売上を増やせない構造がB社には潜在しています。
逆に、A社の方は、従業員を増やせば、売上高を増やせる要素を持っています。
売上高の伸び代、スケールするかどうかという点では、A社の方が期待値が高いです。
従業員が多いほど、企業の「社会性」は高い
社会的視点でみると、A社の従業員が、B社と比べて圧倒的に多いです。
企業が従業員を養い、さらに従業員に対する社会保険や税金を納めていますので、
その分、A社の企業としての「社会性」は高いのです。
逆を言えば、その分人件費が重く、またその会社が倒産した場合、従業員への影響の範囲が広いとも言えます。
「筋肉質」を目指すか、「社会性」を取るか
マラソンに例えれば、B社は無駄肉の少ない「筋肉質」のランナーで、一方、A社は、みんなでワイワイ参加するような「ファン ランニング」のランナーに近いと言えます。
自分が、会社を任された場合、経営者として「筋肉質」と「社会性」、どちらを目指せばいいのか。
「企業は社会の公器」というように、従業員をなるべく多くし、「社会性」を高める、ということが重要と感じつつ、企業の「利益率」という点でみれば、できるだけ少ない費用で利益を産むことも大切です。
経営には、持続的な運営ができていれば、こういう形でなければいけないという正解というものがなく、この辺のバランスは、経営者の考えが現れやすいかもしれません。
料理人と経営者の矛盾
この企業経営のバランスのことを考えていたら、フランス料理店の雄「ひらまつ」の社長の言葉で、「料理人であると同時に、経営者であることの苦労」というような話を思い出しました。
ひらまつの社長は、経営者であると同時に料理人です。料理人としては、美味しい料理を提供したく、どうしても最高の食材を欲しくなります。一方で、経営者という点では、少しても安く食材などを仕入れる、という意識が働いてしまいます。それらを両立させることは苦労する、という内容の話だったと記憶しています。(ずいぶん前の話なので、違うかもしれません。)
料理店に限らず、企業全般にも、同じことが言えるかもしれません。
料理人と経営者の両立の苦労
by 平松 宏之