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「監査等委員会」設置会社への移行手続き方法

「監査等委員会」設置会社への移行手続き方法について、ポイントを簡単にまとめてみました。

 

「監査等委員会」設置会社への移行手続き方法

 

 

「監査等委員会」設置会社への移行手続きの流れ

従来の「監査役会」設置会社から、「監査等委員会」設置会社への移行手続きは、以下のような手順が必要となります。

まず、株主総会で、今までの監査役等を廃止し、監査等委員を設置する定款変更を行い、監査等委員でない取締役(従来の業務執行の取締役)と、監査等委員である取締役を選任する必要があります。

その株主総会後に、取締役会を開き、代表取締役や役付取締役などを改めて選任し直します。また、併せて、監査等委員会を開き、「常勤監査等委員」や監査等委員の取締役報酬額などを決めて行きます。

  1. 株主総会の開催
    • 定款の変更:監査等委員である取締役の設定、監査等委員の新設、監査役・監査役会の廃止など
    • 「監査等委員でない取締役の報酬」「監査等委員である取締役の報酬」の決定
    • 取締役の選任:取締役続投の人も、改めて選任する必要がある


  2. 株主総会直後の取締役会の開催
    • 代表取締役の選任
    • 役付取締役・取締役の順位の決定
    • 「監査等委員でない取締役」の報酬の決定
    • 関連規定の変更:取締役会から業務執行内容の分離など


  3. 監査等委員会の開催
    • 監査等委員会規定の承認
    • 監査等委員会議長の選任
    • 常勤監査等委員の選任
    • 選定監査等委員の選任
    • 特定監査等委員の選任
    • 「監査等委員である取締役」の報酬額の決定
    • 監査等委員会の監査基準/行動指針の制定

 

 

「監査等委員会」移行の定款の変更サンプル文面

「監査等委員会」移行に必要な定款変更は、以下の通りです。「監査役・監査役会」の項目を全て削除した、新たな項目を追加したりと、かなり大掛かりなものになります。

なお、定款変更は、2/3以上の賛成が必要な「特別決議」になりますので、上場会社は事前の票読みが肝要です。

 

 現行変更
(機関) 第X条
当会社は、株主総会および取締役のほか、次の機関を置く。
(1) 取締役会
(2) 監査役
(3) 監査役会
(4) 会計監査人
第X条
当会社は、株主総会および取締役のほか、次の機関を置く。
(1) 取締役会
(2) 監査等委員会
(削除)
(3) 会計監査人
(取締役の員数) 第X条
当会社に取締役XX名以内を置く。

(新設)
第X条
当会社に取締役(監査等委員である取締役を除く)XX名以内を置く。
2 当会社の監査等委員である取締役X名以内を置く。
(取締役の選任) 第X条
取締役は株主総会の決議によって選任する。
第X条
取締役は監査等委員である取締役とそれ以外の取締役とを区別して、株主総会の決 議によって選任する。
(取締役の任期) 第X条
取締役の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会終結の時までとする。

(新設)



(新設)
第X条
取締役(監査等委員である取締役を除く) の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会終結の時までとする。
2 監査等委員である取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会終結の時までとする。
3 任期の満了前に退任した監査等委員である取締役の補欠として選任された監査等委員である取締役の任期は、退任した監査 等委員である取締役の任期の満了する時までとする。
(代表取締役、役付取締役および執行役員) 第X条
取締役会は、その決議によって代表取締役を選定する。



2 取締役会は、その決議によって、取締役社長1名のほか、取締役会長1名並びに取締役副社長、専務取締役および常務取締役を若干名定めることができる。
第X条
取締役会は、その決議によって取締役(監査等委員である取締役を除く)の中から代表取締役を選定する。

2 取締役会は、その決議によって、取締役(監査等委員である取締役を除く)の中から取 締役社長1名のほか、取締役会長1名並びに取締役副社長、専務取締役および常務取締役を若干名定めることができる。
(重要な業務執行の決定の委任) (新設) 第X条
当会社は、会社法第 399 条の 13 第6項の規定により、取締役会の決議によって、重要な業務執行(同条第5項各号に掲げる事項を除く。)の決定の全部又は一部を取締役に委任することができる。
(報酬等) 第X条
取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として当会社から受ける財産上の利益 (以下「報酬等」という。)は、株主総会の 決議によって定める。
第X条
取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として当会社から受ける財産上の利益は、監査等委員である取締役とそれ以外の取締役とを区別して、株主総会の決議によって定める。
(監査役および監査役会)   (全て削除)
(監査等委員会) (新設) (常勤の監査等委員)
第X条
監査等委員会は、その決議によって監査等委員の中から常勤の監査等委員を選定することができる。

(監査等委員会の招集)
第X条
監査等委員会の招集通知は、各監査等委員に対し、会日の3日前までに発する。ただし緊急のときは、この期間を短縮することができる。
2監査等委員会は、監査等委員全員の同意があるときは、招集の手続きを経ないで監査等委員会を開催することができる。

(監査等委員会の決議方法)
第X条
監査等委員会の決議は、議決に加わることができる監査等委員の過半数が出席し、その過半数をもって行う。ただし、法令に別段の定めがある場合には、その定めによる。

(監査等委員会規程)
第X条
監査等委員会の運営について法令または本定款に別段の定めなき事項は、監査等委員会の決議によって定める監査等委員会規程による。

 

 

取締役会から業務執行を分離可能

定款の中で重要なのが、以下の部分です。

当会社は、会社法第399条の13第6項の規定により、取締役会の決議によって、重要な業務執行(同条第5項各号に掲げる事項を除く。)の決定の全部又は一部を取締役に委任することができる。

 

これにより、取締役会で従来決定していた事項のうち、業務に関するものを、経営会議などの社内会議体に移行することが可能となります。

この移行は、経営会議などの会議体ではなく、代表取締役社長や業務執行取締役などの取締役に委任することで、よりスピード感のある意思決定ができる体制とすることも可能となります。しかし、実際問題として、内部統制として、会社という組織をきちんと機能させる上では、経営会議のような会議体に移行するパターンが多いように感じます。

 

 

任期1年の「監査等委員でない」取締役と、任期2年の「監査等委員である」取締役

この 「監査等委員会」設置会社になると、取締役の任期は、従来よりも短くなります。

通常、業務執行の取締役は、以前は任期2年でしたが、「監査等委員でない」取締役の場合は任期1年に。

また、監査役の時は任期4年でしたが、監査等委員である」取締役の任期は2年。

それぞれの任期が1/2になった感じで、選任する頻度がそれだけ増えることになります。

上場会社で、取締役を毎年選任するというのは、すこし手間が増えてしまいます。

 

 

社長になれない「監査等委員である取締役」

定款に明記されているように、監査等委員である取締役は、社長や役付取締役にはなれません。これは、「監査等委員」である取締役は、業務をおこなってはいけない、ということです。

 

 

「選定」監査等委員と「特定」監査等委員

監査等委員にも、「常勤監査等委員」「選定監査等委員」「特定監査等委員」というものがあります。

常勤監査等委員は、従来の「常勤監査役」のように、日頃会社内にいる監査等委員ということになります。

新たに出てくる単語として、「選定」監査等委員と「特別」監査等委員というのものがあります。それぞれ、どういうものなのかということを、以下紹介します。

 

 

監査権限を持つ選定監査等委員

従来の監査役のような監査権限は、監査等委員である取締役には、原則的に付与されていません。「監査等委員会」設置会社は、「監査等委員会」が会社の監査を行う、いわゆる「組織監査」という形態になるためです。

「選定」監査等委員として選任すると、各選定監査等委員の取締役は、従来の監査役が持っていた、監査権限を持つことになります。

 

 

通知窓口となる「特定監査等委員」

次に、特定監査等委員。

監査等委員は、代表取締役や会社との間で、通知や書類の受領などを、いろいろと行う必要があります。その際の、いわゆる連絡窓口となるのが「特定」監査等委員です。

 

 

監査等委員設置会社への移行会社数は増加中

会社法が改正され、監査等委員会設置会社の機関設計が可能になってから、約2年が経ちました。

ある統計によると、2017年1月初時点で、監査等委員会設置会社に移行した会社は700社を超えたとか。まだまだ増えそうな勢いです。

監査等委員会による、企業経営の監査体制という新しい仕組みは、今後どうなっていくか。

 

 

 



経営者は視野が狭くなるんですよ。
取締役会が社内の人間だけだと、モノカルチャー)になってしまう。
そこで社外取締役は、経営者が気付かない切り口で、視野を広めてくれる。

by 新浪 剛史

 


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