新任取締役の経営手帳

取締役のイロハ/ベンチャー・上場会社の経営/会社法などの法制度/時事話題

上場/IPOは誰のため?

「上場は誰のため?」と思うことがあります。

 

上場がゴール?

 

 

以前にも「上場ゴール」という話題で記事にしたことがありますが、ベンチャー創業者には「上場/IPO」への憧れがあると感じます。

 

www.keiei123.info

 

 

IPOしたいんです

日頃、若手の創業社長さんたちに会う機会がいろいろとあり、

「2年後のIPOを目指しています」

と言われる社長さんが必ずいます。

 

その目標自体は決して悪くはなく、企業の成長における目標を設定することは大切で

「日本でシェア1位になる」

「海外進出する」

「世の中の●●を解決したい」

という目標にも似たようなものだと思います。

 

問題なのは「IPO自体が目標(ゴール)」となっていることが多いことだと思います。

 

 

「IPOはゴールではなく、あくまで通過点」ということ。 

「上場した後、どのような事業展開を考えているのですか?」

と聞くと、

「・・・・?」

その内容はインサイダーになるから話さないのか、もともとその後の会社を考えていないのか。

どちらかはわかりませんが、IPOしてから先のことは考えていない感じです。

まるで、IPOが会社のためというよりも、創業者が保有している株式を売り出し得られるお金の方が大事なのかと思ってしまいます。

 

 

調達資金使途は?

本来のIPOは、会社が次の成長のための資金調達をする場で、そのおまけとして、創業者が保有株式を放出して、創業者利益を取ることができます。

ちなみに、最近の企業の資金用途を見ますと、以下のような感じです。

メルカリ(4385)

連結子会社への投融資を含めた当社グループの運転資金(日本及び海外において当社グループが運営するCtoCマーケットプレイス「メルカリ」等のユーザ数拡大に向けたオンライン広告、TVCM、キャンペーン等に係るポイント付与等の広告宣伝費)、借入金の返済資金に充当予定。残額は将来におけるサービス付加価値向上のための広告宣伝費、開発に係る人件費等の投資資金等に充当方針。

 

アイペット損害保険(7323)

基幹システム開発にかかる設備投資及び開発費用、業務支援システム開発にかかる設備投資費用、商品対応システムにかかる設備投資費用、札幌支店の移転にかかる建物等の投資、本社増床にかかる敷金及び内装等の設備資金、青森事業所の移転にかかる敷金及び内装等の設備資金、残額は、将来における当社サービスの成長に寄与するための支出又は投資に充当予定

 

共和コーポレーション(6570)

設備資金(アミューズメント施設運営事業の店舗において利用するアミューズメント機器の購入)に充当予定

 

会社にとって意味がない資金調達は、上場審査で断られやすいので、さきほどの「・・・」の会社は、今後エクイティ・ストーリーを考えることになると思います。 

 

 

ATMに充填する紙幣をIPOで調達したセブン銀行

ちょっと変わった上場目的だったのが「セブン銀行」です。

セブン銀行の平成20年1月に「株式売出届出目論見書」をみると

セブン銀行

資金調達の全額を運転資金として現金自動預払機(以下、「ATM」)装填現金に充当する予定であります。
*お客さまに仮払いするための現金をATMに装填しておく必要があり、この資金が「ATM装填現金」であり、当社にとっては運転資金にあたります。

たしかにATMには現金が必要です。「資金」という金銭よりも、「紙幣」という物理的なものをIPOで調達してしまったという形です。

 

 

相続対策でもあった株式上場

以前、株式上場は相続対策の一環で行われることがありました。

業績がよい非上場企業で、経営者が息子などに経営を引き継がせる場合、経営だけでなく、会社の経営権を引き継がせる(株の譲渡をする)と、かなりの相続税が発生してしまいます。

その相続税を支払うために、上場して、経営者が株式を一部売り出して、相続税を支払う源泉にしたというような時代もありました。

 

 

最近のIPO資金調達状況:一社あたり「数億円」

東京証券取引所が公表している、ここ最近のIPOによる資金調達状況は、以下のようになっています。

 

年月 IPO社数 調達金額 一社平均
2018/2 2社 1,687百万円 844百万円
2018/3 12社 13,189百万円 1,099百万円
2018/4 8社 3,113百万円 389百万円

*東京証券取引所がまとめている「上場会社資金調達額」より

 

調達金額を社数で割ると、一社あたり「数億円」という状況です。

数億円規模ですと、上場に向けて管理部門を強化したり、監査法人にお願いしたり、証券会社や取引所への審査・管理手数料、上場祝い行事などで、あっという間に消えてしまう規模感です。

以前でしたら、将来性のあるベンチャーでも、もう一つゼロが多い金額を調達できましたが、現在はなかなか厳しい状況が続いています。

 

上場すると、パブリックカンパニーになり厳格なコーポレートがバンスが求められ、さらに適時開示などといった報告義務が発生します。また、買収リスクが発生します。

わずか数億円のために、これらの手間や厳しさを考えると、非上場のままの方が、幸せな会社もあると思います。

 



IPOはスタートラインだという意識でなくてはいけません。
by 牧野 正幸

 

 


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