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日本で「社会的責任投資」が流行らない理由

「ESG投資」「社会的責任投資」「SRI投資」という単語が、世の中に定着しつつあります。

 

日本で「社会的責任投資」が流行らない理由

 

運用側で広がっているスチュワードシップ・コード

最近では、運用会社の受託者責任や、アセットオーナーによるスチュワードシップ・コードの受け入れなどで、投資先のESG状況の把握が求められるようになってきています。日本の年金運用であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)でも

株式上場会社ですと、ファンドの運用会社から、 ESGや社会貢献活動の実施状況に関する質問票がときどき届いたりします。運用会社により、質問内容や量は様々で、全て答えるのが、かなり大変な時もあります。

ESGや社会貢献活動の実施状況は、財務情報のようにEDINETや金融情報サービスでのデータベースで簡単に収集できるものではないので、質問票やヒアリングなどで、運用会社が収集しなければいけません。調査を受ける会社と調査をする運用会社の双方とも、かなり手間がかかる作業となっています。

 

 

日本のSRI投資はあまり進んでいない? 

ある調査によると、各国でのSRI投資は、以下のような状態になっています。

 

2016年時点のSRI投資残高と比率
国名 SRI投資残高
(単位:10億)
運用資産に占めるSRI投資の比率
ヨーロッパ $12,040 52.6%
アメリカ $8,723 21.6%
カナダ $1,086 37.8%
オーストラリア/ニュージーランド $516 50.6%
アジア(除く日本) $52 0.8%
日本 $474 3.4%

 *出所:世界持続的投資連合(GSIA)

 

この調査によると日本でのSRI投資残高は4,740億ドル で、運用資産の3.4%程度となっています。

これ見て思うのは、SRI投資の残高は少ない、ということ。

日本の金融資産の規模は、2016年時点で米国に次いで2番目で、世界の中でもかなり上位にあるにもかかわらず、SRI投資にお金が十分回っていないように思います。

 

 

株式投資/投資信託を行なっている日本人が少ないのが原因?

投資信託、とくにSRIファンドのようなものには、日本人はあまり関心がないのかもしれません。

日本の個人金融資産1,800兆円のうち投資信託は100兆円、株式200兆円。現金預金が900兆円、生命保険500兆円という状態です。

現金預金や生命保険にウェイトを置くのが日本人の特徴で、さらに最近話題の仮想通貨などをみると、

「世界の仮想通貨の保有率、日本が世界最高の11% 」

という状況からわかるように、仮想通貨やFXなどといった、短期的に収益を取れる方法に人気があるのも、日本人の特徴ともいえます。

  

 

 

SRI投資は収益率がよくない?

とあるSRIファンドの運用成績をみると、以下のような状態です。

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同じ期間のTOPIXの動きを見ると、

  • 2017年12月終値:1,817.56
  • 2007年12月終値:1,475.68

基準価額でみるとTOPIXの方がパフォーマンスが優れています。SRIファンドではなく、インデックスファンドに投資した方がよいように思えます。

「SRIに強い会社=株価のパフォーマンスが優れている」というわけではないようです。運用会社にて、投資先などへのSRI/ESG調査を行う分、管理コストが高くなってしまうのかもしれません。

 

SRI/ESG調査を行う運用会社も、その調査を受ける会社側も、それなりに負担が大きいにもかかわらず、実際にSRI/ESGに関連した運用の規模が少ないと、何だか悲しくなってきます。

 

 



世界に冠たる大企業であっても、CSR(企業の社会的責任)をどこかに置き忘れている企業が多い。
by 福地 茂雄

 

 


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