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「3%超賃上げで法人税負担25%へ引き下げ」2018年度税制改正のメリット

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2018年度税制改正で注目されている「3%超賃上げで法人税負担25%へ引き下げ」という点をシミュレーションしてみました。

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2018年度税制改正 

2018年度税制改正が2017年末に閣議決定されました。

個人の控除額が引き下げられたり、出国税や森林環境税が盛り込まれたりと、変化のある税制内容となっています。

詳しくは、こちらをご参考ください。

平成 30 年度税制改正の大綱

 

企業において注目すべきは、「賃上げ企業への税制優遇」という点でしょう。

メディア等でも、

賃上げ企業の負担軽減、法人税負担を25%へ引き下げ 政府・与党が最終調整

税制改正 企業の法人税引き下げで調整

などと紹介されています。

 

 

大企業における所得拡大促進税制の改組 

今回の税制改正の中で注目されている所得拡大促進税制の改組に関して、雇用者給与等支給額が増加した場合の税額控除制度について、その内容をチェックしてみましょう。ここでは、大企業(資本金1億円以上の企業)の場合をみていきます。

 

2018年度税制改正での雇用者給与等支給額が増加した場合の税額控除制度の内容
適用条件 a) 前期の平均給与等支給額×103% ≦ 当期の平均給与等支給額
b) 当期の減価償却費×90% ≦ 当期に取得した国内の減価償却資産の取得価額の合計額
c) 前期・前々期の教育訓練費の平均×120% ≦ 当期の教育訓練費
控除額 a bを満たすがcを満たさない場合
(当期の給与等支給額-前期の給与等支給額)×15%
a b cを満たす場合
(当期の給与等支給額-前期の給与等支給額)×20%
控除限度額 控除税額は当期の法人税額の20%を上限

 

簡単にまとめると、まず、この制度を適用するための、3つの条件を定めています。

  • 平均給与額を前年度比べて3%増やすこと
  • 新たに国内で設備投資を行うこと
  • 教育訓練費を増やすこと

これらの条件を満たすと、給与増額の最大20%を税金から控除できるようになります。

なお、「増額」を太字にしたのは、給与総額ではないということをアピールするためです。実際に計算すると、分かりますが、「給与増額の20%」では、控除できる金額は、かなり少ないです。この点は、のちほどご紹介します。

 

 

雇用者給与等支給額が増加した場合の税額控除制度の新旧比較

この雇用者給与等支給額が増加した場合の税額控除制度は、現在施行されているものが存在します。

 

雇用者給与等支給額が増加した場合の税額控除制度の新旧比較
  〜2018年3月末 2018年4月以降
適用条件
  • 平均給与支給額を基準年度と比べて5%値上げ
  • 平均給与支給額が前期と比べて2%値上げ
  • 平均給与支給額を前年度と比べて3%値上
  国内での設備投資の実施(固定資産の取得)
  教育訓練費の増額
控除額 給与増額の最大12% 給与増額の最大20%
控除限度額 法人税額の10%を上限 法人税額の20%を上限

 

新旧で比較すると、適用条件の数が増えたものの、控除できる金額は給与増額の最大12%から最大20%に拡大されました。(同時に控除の限度額も、法人税額の10%から20%となりました。) 

 

 

本当に「法人税負担25%」になる?

今回の所得拡大促進税制の改組の内容は、一見すると、かなりの税控除ができ、企業にとってメリットがあるように見えます。

実際に、試算してみましょう。

 

法人税率が25%に下がるための条件

(試算条件)
  • 適用条件を全て満たすものとする
  • 法人税実効税率:29.97%
  • 税引き前当期純利益:100億円
→法人税:29億97百万円

給与増額をし、今回の控除制度をフルで利用した場合
→法人税:29億97百万円×80%=23億97百万円に削減可能
法人税率:23.976%

→税控除額:29億97百万円-23億97百万円=6億円
給与増額:6億円÷20%=30億円

 

給与を前年比で30億円増やすと、法人税率がかなり下がることがわかります。

上の例では、 30億円の費用増で、6億円の税金削減です。適用前の法人税額の30%相当を給与増額した場合、法人税の控除限度額である20%くらいになります。

 

給与総額3%増で30億円というと、人件費が約1,000億円ぐらいの企業が相当します。

平均年収500万円とすると、従業員が2万人ぐらいいる企業となります。 

 

 

3%の給与増額では、法人税額はほとんど変わらない?

 実際の企業での決算の情報を使って、試算してみます。

 

実際の企業での試算

(試算条件)
  • 売上高:46億円
  • 人件費:6億
  • 純利益:1.5億円
  • 法人税額:0.6億円(税率40%)
→人件費:3%増→ 0.18億円増加
→給与増額の20%→0.03億円(300万円)の税控除

→純利益:人件費の増額により、1.5億円-0.18億円=1.32億円
→法人税額:1.32億円×40%-0.03億円(300万円)の税控=0.498億円
→法人税率:0.498億円÷1.32億円=37.7%

法人税率:40% → 37.7%

 

たしかに、税率は下がります。

0.18億円(1800万円)の費用を増やして、0.03億円(300万円)の税控除が可能となります。

しかし、25%まで下げるのは、なかなか大変そうです。

 

 

税金削減と費用増のバランス

今回の雇用者給与等支給額が増加した場合の税額控除制度では、人件費の他に、設備投資や教育訓練費といった費用も増やさないと、この税控除を利用できません。

上の例にあるような、0.18億円+αの費用が増えて、控除できるのは0.03億円分という感じでは、企業が利用しようと思うインセンティブとしてはどうなのでしょうか?

「費用の増加」と「控除できる税金額」のバランスが重要だと感じます。

 

なお、現行制度の適用状況(大企業だけでなく中小企業含む)は、

制度利用は15年度で約9万件あり、トータルで2700億円の減税効果があった。

ということです。

 

 



法人税の引き下げを政府に要求するより先に、赤字企業を減らすことだ。
by 山田昭男(未来工業・創業者)



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