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「配当金」はどうあるべきか

配当金について、ちょっと考えたことなど。

 

「配当金」はどうあるべきか

 

 

利益を株主に分配する「配当金」 

配当金とは

株主が利益配当請求権に基づいて受け取ることができる利益の分配のことである。

簡単に言えば、会社が得られた利益を、株主に還元する形になります。

基本的には、配当金の原資は、利益剰余金、つまり利益の範囲内となりますが、配当可能な剰余金がない状態で配当を行う、「タコ配当」というものもあります。

「タコ配当」とは、蛸が空腹の場合には自らの足を食べるという俗説になぞらえた名称

タコ配当は、自らの資本を食いつぶして、配当に拠出する形になります。

 

 

利益を社外に出すか・社内に留めるか

配当金などのよう行為は、現金が社外に流出します。

逆に、利益を社内に出さずに留めることを、「内部留保」といいます。

 

たとえば、

期初の株主資本(A): 100万円
利益(B): 10万円
配当金(C): 5万円
期末の株主資本(D=A+B-C): 105万円

 

上表の配当金(C)を大きくすれば、その分株主資本(D)が少なくなり、逆に配当金(C)を少なくすれば、株主資本(D)が多くなり、会社が使える資金が増えることになります。

 

 

投資家は「株価」と「配当金」、どちらがうれしい?

さまざまな企業の株主の動態調査を見ると、その企業に投資している動機で、グループ化することができます。

  • 一つ目は「株価狙い」
  • 二つ目は「配当還元」
  • 三つ目は「株主優待狙い」

とくに個人投資家の場合、「配当も欲しいし、株価もあがってほしい。そして、できれば、株主優待も実施して欲しい」という欲張りな動機も、たまに見受けられます。

企業側でなく、投資家側から見ると、「配当金」というのは、その収益の分配をいただける、企業に投資している見返りの一つとして、貴重な機会です。

一方で、企業内部に留保し、事業投資して、それがきちんと計画通りにいけば、「株価」の向上に結びつきます。その結果、「株価」が上がれば、株式の売却益を狙うこともできます。

配当という問題は、利益を「社内」「社外」どう分配するのか、ということ、企業の今後の成長に使うのか、現時点で払い戻しするのか、という問題とも言い換えられます。

 

 

 配当の考え方「配当政策」

「配当政策」というのは、企業によって様々です。

  • 内部留保を優先させるため「無配」
  • 毎年「安定配当」を継続
  • 「業績連動型の配当」

など、いろいろなパターンがあります。

 

 

伝統的な「5円配当」

一昔前は、株券は「50円株券」が主流でした。

そのような時代では、株券の額面の1割を配当する形で「5円配当」というのが一般的でした。業績がいい時も悪い時も、「5円配当」ということになり、社外流出額が一定となります。

 

今では、無額面株券となってしまい、さらに株券を刷らずに済んでしまうような仕組みになっています。

無額面となると、今までのような「額面の1割」という根拠もなくなり、配当政策の新たな考え方がでてきます。

 

 

内部留保を優先する、ベンチャーやIT系企業

一般的に、成長率の著しい、IPOしたてのベンチャー企業や、IT企業などは、配当をせずに、次の成長のための原資に使うことが多いです。

理論的には、ROE20%ぐらいとしたら、株主が配当として現金でもらうよりも、事業に投資してもらった方が、企業価値が大きくなり、その分株価に反映されやすくなります。

 

 

配当を始めたマイクロソフト

Windowsやオフィスソフトで知られるマイクロソフトは、従来は配当金を実施せず、得られた利益を内部留保させ、企業内に再投資してきました。

営業利益だけで約2-3兆円も稼ぎ出していていますから、普通の日本企業の視点では、スケールの大きな事業規模です。

そのマイクロソフトが2003年から配当を始めています。

事業に再投資して、今までのような成長を行うことが難しいから配当を始めた、と言われています。

 

 

成熟企業は配当で株主還元

ビジネスモデルが確立し、市場が成熟している企業などは、今後大きな成長は期待できないものの、安定的な利益を継続的に得られるという企業もあります。

そういう企業の場合、配当を安定期に出すことが多いです。

 

 

配当金を出さないと、剰余金が貯まりすぎてしまう

配当金などのような形で、現金を社外に流出させないでいると、その分現金は、株主資本として蓄積していくことになり、財務体質が強固になっていきます。

しかし、利益も併せて増えていかないと、株主資本に対する利益率であるROEが低下していきます。

株主資本 当期純利益 ROE
1年目 100万円 10万円 10%
2年目 110万円 10万円 9%
3年目 120万円 10万円 8%
4年目 130万円 10万円 7%

*ROE: 当期純利益÷株主資本
 (ROEは、期初期末平均の株主資本で算出しますが、ここでは簡便的に期初の株主資本を用います。)

 

理想的には、蓄積された利益を原資に、既存事業の改善や、新規事情の取り組みなどを行えば、利益を増やしていくことにつながります。

しかし、計画通りにいかないのが世の常ですので、利益が増えるということは保証できません。さまざまな不測事態で、企業存続が危ぶまれることも起こりえます。

たとえば、東日本大震災3.11前では、安定経営・安定配当の銘柄で、投資対象として安心感のあった@東京電力」。今のような事態を、誰が予測できたかのか。

そういう事態に備えて、5年ごとに「記念配当」や「感謝配当」のような形で、適宜、配当金を増額させて、株主に還元するということは、大切なのかではないかと思ったりします。

 



現金をたくさん持っている会社の場合、ほかに使うところがなければ配当で払いだすのは良い選択。
by 阿部 修平

 


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