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6月は株主総会ラッシュシーズン / 個人株主への甘遇ブームは去った?

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 毎年6月は株主総会ラッシュシーズン。企業の担当者のみなさま、お疲れ様でした。

 

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2017年6月は株主総会ラッシュシーズン

3月決算の企業が多い日本では、6月は株主総会の開催ラッシュシーズンです。事業年度の終了後3か月以内に株主総会を開くことと、会社法で決まっているからです。

2017年のピークは、とある統計によると、

集中日である6月29日は全国で656社が株主総会を開催する

当の会社以外にも、株主総会の会場、株主に送付する招集通知・事業報告書などを準備する協力会社や発送会社など、関連する業界にとって、大変な時期でもあります。

 

 

企業の個人投資家対策

15年ほど前に、その周辺業界にいたときは、個人株主を増やすことが業界全体のブームのようになっていて、

  • 株主総会のビジュアル化
  • 株主総会のお土産の充実化
  • 株主総会後の食事提供
  • 株主優待の充実化

といったことを実施する企業が、急速に増えていきました。

 

 

株主総会のビジュアル化

今でこそ、株主総会に参加すると、議長の説明に合わせて、スライドなどが投影され、業績や議案などをわかりやすく伝える、というのが一般的になっています。

それ以前は、投影するスライドなどなく、ただ文章の読み上げだけで、普通の人にはわかりにくいものでした。さらに、一方的に説明をし、形だけの質疑を取り、会社提案の議案をそのまま可決させる、という形式だけの株主総会が多かったです。

今でも、「形式だけ」という点ではあまり変わりませんが、「株主の声を聞く」という点は、その姿勢を示す企業が増えてきて、「開かれた株主総会」として、きちんと説明し、質問にもきちんと答える、といったことが一般化してきました。

 

 

株主総会後の食事提供:懇親会 

同じ時期に、ホテルなどで株主総会を開催し、開催後はそのまま懇親会を催して、立食形式などの食事などでもてなす、という企業が増え始めました。なお、株主の参加費は無料です。

人気ある企業ですと、数百名〜数千名ぐらいの株主が参加されるわけですが、結婚式のような事前申し込みでなく、当日どのぐらいの人が参加されるのかを、「去年が●●人ぐらい参加したから、今回は●●人ぐらいかも」というような感じぐらいしか予測が立てられず、それで準備をするということになります。

料理の数だけでなく、お土産の数などもあり、「足りない」という最悪の状況だけは避けようと、余分に用意したりと、企業側の負担が大きかったと思います。

 

 

株主優待による個人株主獲得

株主優待も、一時期大変活況な時期がありました。

株主優待なども、自社商品以外に、食事券・金券類・クオカードを提供する企業が、当時、急速に増えていました。

最近「ふるさと納税」で、豪華すぎる返礼品が問題となりましたが、あれと似たような感じで、株主優待も注目されていました。

株主優待が欲しいから、その企業の株主になったという人も多く現れました。

果たして、その目的でいいのかどうかは別にして、株主数を増加させる一つの手段としては、かなり有効だったようです。

 

 

ブームは去った?

これらの施策は、機関投資家はほとんど興味がないので、個人投資家対策の一環でしかありません。

あの時期は、全体的に個人投資家対策がブームだったように感じます。

今は、そのようなブームは去ったかな、という印象を持ちます。

 

まず、総会後の食事提供を廃止する企業が増えてきました。

従来、午前中に株主総会を開催していたのを、午後に開催することで、食事が不要な状況にしていきました。

 

 

マンネリ感のある株主優待

株主優待品は、以前のような「こんなにもらえるのか!」と驚くような優待は少なくなり、なんとなく縮小傾向のような雰囲気を感じます。

株主優待向けの商品を毎年作り提供する、という毎年変化を行なっている企業もあれば、毎年同じものを送る、という企業もいます。

昨今の株主優待を見ていると、企業の対応はさまざまです。

 

なお、個人投資家の視点で言えば、「株主になって、自社商品の株主優待を無料でもらう」よりも、お店で、普通に商品を買った方が、費用が安く、その上安全です。

たとえば、3,000円相当の株主優待品をもらうのに、10万円ぐらいの株式を購入するのであれば、株式は買わずに3,000円分の商品を購入した方が、個人投資家の費用負担は少なく、企業にとっても収益になります。

 

 

個人投資家が増えすぎた

企業側の熱気が下がってきた要因の一つとして「個人投資家が増えすぎた」という点があるかもしれません。

東京証券取引所の統計によれば、最新の個人株主数は、約4,950万人(延べ人数)で、過去最高となったようです。(これは延べ人数なので、Aさんが4社の株主であれば、4人とカウントされます。)

個人株主を、これ以上伸ばせる余地があるのか。頭打ちの時期が、そろそろ来るのかもしれません。

 

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東証統計の個人株主數の推移

 

また、企業側が以前ほど「個人株主」を求めなくなってきた、という状況かもしれません。

企業から見れば、個人株主を増やせるところまで増やす、ということは、あまりメリットはなく、必要最低限の人数を満たせば、増やす意欲が減ります。

むしろ、書類を送ったり、証券代行に名簿管理料を払ったり、という点で、株主数が多すぎると、その費用が膨らんでしまう、ということもあります。

 

 

「アーリーアダプター」が得をした

15年ほど前の時期に、株式投資を行なっていた人は、マーケティング的に言えば「アーリーアダプター」と呼ばれるグループです。

上述のような、総会後の食事や充実した株主優待など、企業の個人株主対応策がいろいろと出てきて、一番楽しめた時期です。

残念ながら、ここ2−3年ぐらいに、株式投資を始めた人は、そういうのと比べると、少し残念かもしれません。

 

 

本来の投資環境に戻る

「優待がもらえるから、この企業に投資する」

「総会後の食事が楽しみだから、株主になった」

ある意味で、株主総会のアフターサービス、株主優待のプレゼント作戦、といったものが減り、応援したい会社や投資妙味のある会社を見つけて投資する、ということになり、株式投資が本来の位置付けに戻って来たのかもしれません。

 

 



株主総会というのは、経営者にとって一種の選挙です
by 渡邉 美樹



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