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新任取締役の経営手帳

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2017年4月から「決算短信」の簡略化が始まる

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 2017年4月から開始される「決算短信」の簡略化で、企業の決算発表は変わる?

 

2017年4月から「決算短信」の簡略化が始まる

 

 

5月の連休を過ぎると、3月決算の企業による年度決算の発表ラッシュが始まります。

 

5月の連休後は、3月決算の企業による年度決算の発表ラッシュ

企業の経理担当者や決算開示担当者にとって、ゴールデンウィークは、決算発表の準備等に追われることが多く、なかなかツライ時期でもあります。

決算月を変えれば、そういう悩みからも解放されるわけですが、それだけの理由で決算期を簡単に変えるわけにもいけませんので、悩みは続きます。

日本の場合、「3月/9月」「6月/12月」の決算月が多いわけですが、年末年始・GWなどの連休などとぶつかり、企業の担当者は休みがまとめにとれないというような企業をいくつも見ました。

今まで見た企業の中で、「1月/7月」「2月/8月」「5月/11月」が、ベストシーズンの決算月だと思います。国民の休日にかぶることが少なく、またこれらの決算月の企業数が少ないので、監査法人などにも余裕がある時期です。

 

 

企業の決算発表の様式「決算短信」

株式上場企業の場合、通期の決算以外にも、3ヶ月毎の四半期に一度、業績を発表をしなくてはなりません。

その発表形式を「決算短信」と呼びます。

 

 

2000年頃までは「決算短信」の内容を読み上げて発表

今でこそ、決算発表は、パワーポイントでのプレゼンするスタイルが一般化しています。

私が、この業界に入った2000年代は、そうではありませんでした。あるとき、日本人ならば誰もが知っている大企業の決算発表の場に行くと、大きな会議室に、アナリストや記者らが座っていて、財務担当役員が前に出て、公表した決算短信を読み上げる、という場面に遭遇しました。

それから2年ぐらい経つと、決算発表を社長が行ない、決算短信の読み上げではなく、パワーポイントなどで決算概要がわかりやすくして、説明するようになりました。

 

 

「決算短信」と「有価証券報告書」の違い

「決算短信」と似たようなものに「有価証券報告書」というものが存在します。

この業界に入り始めた頃、両者の違いがよくわかっていませんでした。普通の人で、この違いを知っているという人は、おそらくかなり少ないのではないかと思います。

 

簡単に言えば、以下のような違いがあります。

  決算短信 有価証券報告書
目的 決算内容の速報板 決算内容の確定版
管轄 証券取引所が様式を定める 金融商品取引法で定める
提出先 証券取引所 財務局
提出期限 決算日から45日以内
(30日以内が理想)
株主総会後
(決算日から3ヶ月以内)
対象企業 株式上場企業 株式上場企業以外も対象となりえる
決定機関 取締役会 株主総会
その他 監査法人の監査は不要

監査法人の監査が必要
(監査法人の監査証明等を添付)

 

 

速報として業績を伝える「決算短信」、 法的な法定報告の「有価証券報告書」

この「決算短信」と「有価証券報告書」は、前半の業績の説明部分を見ると、内容はほとんど一緒です。後半部分では、記載項目が違い、有価証券報告書の方が細かく書かれています。

 

見た目は同じなのですが、その用途・目的が大きく違います。

「決算短信」は、企業の業績内容を、投資家などに伝えることを主の目的としています。証券取引所が、その発表様式を決めています。

 

一方、「有価証券報告書」は、「株式」という有価証券に定められた、法定報告の一環で作られるものです。届け出る先は、本社所在地が管轄している財務局になります。

イメージしやすいのは、税務署への税務申告に似ている感じです。企業の定めとして、届け出なくてはいけない、ということです。

また「有価証券報告書」は、株式上場企業だけでなく、資本金の大きい大会社なども提出の義務を負います。

 

ここから、ようやく本題となります。

 

「決算短信」が簡略化される

2017年2月10日に東京証券取引所が、この「決算短信」の作成要領に関して、新たな様式を発表しました。

今までの大きな変更点等としては、以下の通りです。

  • 「サマリー情報」について、所定の様式の使用を「義務」から「要請」に変更
  • 「監査手続の実施状況に関する表示」:「(四半期)決算短信は監査の対象外です。」と明記
  • 「経営成績・財政状態に関する分析」:分析的記載をやめて、「経営成績等の概況」に変更
  • 「企業集団の状況」「利益配分に関する基本方針及び当期・次期の配当」「事業等のリスク」「役員の異動」「経営管理上重要な指標 」「生産・受注・販売等の状況」等は、開示要請を取りやめ、任意開示

 

従来の決算短信は「速報板」という位置付けではありましたが、文章による情報、いわゆる「定性情報」が、それなりの分量があり、決算短信としてまとめるのにかなり負荷のかかるものでした。

今回の改正で、その定性情報部分が、従来と比べて、大幅にスリム化され、負荷が少し減りました。

 

これにより、「簡略化」された、と言われています。感覚的には、「決算数値がまとまったら、それをすぐに公開しろ」というような感じにも受け取れます。

 

 

東芝向けの特別処置?「(四半期)決算短信は監査の対象外です。」

この改正で、ちょっと気になったのが「(四半期)決算短信は監査の対象外です。」という点。

現在、問題となっている「東芝」。監査法人が、決算内容への了承を出せずにいて、決算発表ができずにいました。(結果的に、企業側が監査法人を抜きにして、決算発表を行いました。)

今回の改正で、この「決算短信は監査の対象外」ということがはっきりし、監査法人の結果を得なくても、決算発表を行うことが可能となります。

まさに、今の東芝にあった処置にも見えます。

 

 

投資家は決算発表の早期化を求めている?

今回の簡略化で、従来の45日以内の決算発表を、より短期にという流れにも発展しそうです。

今のところ、決算短信は、決算日から45日以内の発表。30日以内が理想とされています。3月決算ですと、5月中旬が決算発表の期日になります。冒頭にありますように、そこらへんで、年度決算の発表ラッシュとなります。

 

今でも、決算数値を取りまとめる、会社内の現場では、決算発表に際して、かなりの負担がかかっています。

決算発表日を早期化するために、その対応日数を縮めるためには、さらなる負担がかかります。1-2日程度の短縮ならば、現場のスタッフの頑張りによりますが、5−10日の短縮となると、経理の仕組みを効率化なども行わないと難しいでしょう。

 

しかし、その早期化のメリットに、その負担が合うのかどうかは、正直疑問です。

料理は、仕込みや準備に相当な時間をかけても、食べるのは一瞬。

決算という業務も、それに似たような感じがします。数値をまとめるのは非常に手間がかかるものですが、発表後の数値を使う側は、一瞬です。

一つの数値には、現場での商品の販売努力や、日々の企業内の社員の皆さんの活動の結果が結集されたものです。そういう情景を思いながら、決算の数値を見ないといけないと思います。

 

 



勝った負けたという情緒的な判断よりも、企業はやっぱり数字。
by 山内 溥

 



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